立体構造的に変化したタンパク質およびプリオンの検出方法
本発明は、試料において立体構造的に変化したタンパク質およびプリオンを検出するための方法ならびにキットを提供する。一つの態様において、立体構造的に変化したタンパク質およびプリオンは、アミロイド形成的疾患と関連している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、試料において立体構造的に変化したタンパク質およびプリオンを検出するための方法ならびにキットを提供する。
【0002】
一つの態様において、立体構造的に変化したタンパク質およびプリオンは、アミロイド形成的疾患に関連している。
【背景技術】
【0003】
関連出願
本国際出願は、2001年5月31日に出願された米国仮特許出願第60/295,456号の優先権を主張する、2002年5月30日に出願された米国特許出願第10/161,061号の恩典を主張する、2003年12月4日に出願された米国特許出願第10/728,246号の出願日の恩典を主張し、それらすべての全開示は、頼られ、かつ参照により本明細書に組み入れられている。
【0004】
発明の背景
1. 立体構造的に変化したタンパク質およびプリオンならびに関連疾患
通常可溶性のタンパク質の立体構造的に変化した不溶性タンパク質への変換は、様々な他の疾患における原因過程であると考えられる。構造の立体構造変化は、通常可溶性かつ機能性タンパク質の定義済みの不溶性状態への変換に必要とされる。そのような不溶性タンパク質の例は以下のものを含む:アルツハイマー病(AD)および脳のアミロイドアンギオパチー(CAA)のアミロイドプラークにおけるAβペプチド;パーキンソン病のレヴィー小体におけるα-シヌクレイン沈着物、前頭側頭認知症およびピック病における神経原繊維錯綜におけるタウ;筋萎縮性側索硬化症におけるスーパーオキシドジスムターゼ;ハンチントン病におけるハンチンチン;ならびにクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)におけるプリオン:(概説として、Glenner et al. (1989) J. Neurol. Sci. 94:1-28; Haan et al. (1990) Clin. Neurol. Neurosurg. 92(4):305-310参照)。
【0005】
しばしば、これらの高度に不溶性のタンパク質は、β-プリーツシート立体構造の共通の特徴を示す非枝分かれ型原繊維で構成される凝集体を形成する。CNSにおいて、アミロイドは、脳髄膜血管に(脳血管沈着物)、および脳実質に(プラーク)、存在しうる。ヒトおよび動物モデルにおける神経病理学的研究は、アミロイド沈着物の近位の細胞がそれらの正常な機能を妨害されることを示している(Mandybur (1989) Acta Neuropathol. 78:329-331; Kawai et al. (1993) Brain Res. 623:142-6; Martin et al. (1994) Am. J. Pathol. 145:1348-1381; Kalaria et al. (1995) Neuroreport 6:477-80; Masliah et al. (1996) J. Neurosci. 16:5795-5811)。他の研究はさらに、アミロイド原繊維が実際に、神経変性を惹起しうることを示している(Lendon et al. (1997) J. Am. Med. Assoc. 277:825-31; Yankner (1996) Nat. Med. 2:850-2; Selkoe (1996) J. Biol. Chem. 271:18295-8; Hardy (1997) Trends Neurosci. 20:154-9)。
【0006】
ADおよびCAAの両方において、主要なアミロイド成分は、アミロイドβタンパク質(Aβ)である。Aβペプチドは、2つの推定のセクレターゼの作用によりアミロイドβ前駆体タンパク質(APP)から生じるのだが、正常なCNSおよび血液に低レベルで存在する。2つの主な変異体Aβ1-40およびAβ1-42が、APPの選択的カルボキシ末端切り詰めにより生成される(Selkoe et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7341-7345; Selkoe, (1993) Trends Neurosci 16:403-409)。Aβ1-42は、ADおよびCAAの両方のアミロイド沈着物においてその2つのペプチドの中でより原繊維発生的かつより豊富である。上記のAD症例におけるアミロイド沈着物に加えて、たいていのAD症例はまた、血管壁におけるアミロイド沈着を伴っている(Hardy (1997)、前記; Haan et al. (1990)、前記; Terry et al.、前記; Vinters (1987)、前記; Itoh et al. (1993)、前記; Yamada et al. (1993)、前記; Greenberg et al. (1993)、前記; Levy et al. (1990)、前記)。これらの血管病変は、CAAの特徴であり、ADの非存在下において存在しうる。
【0007】
ヒトトランスチレチン(TTR)は、4つの同一の、主にβ-シート構造をもつ単位で構成される正常な血漿タンパク質であり、ホルモンチロキシンの輸送体として働く。TTRのアミロイド原繊維への異常な自己集合は、2つの型のヒト疾患、すなわち、全身性アミロイドーシス(SSA)および家族性アミロイドポリニューロパシー(FAP)、を引き起こす(Kelly (1996) Curr Opin Struct Biol 6(1):11-7)。FAPにおけるアミロイド形成の原因は、TTR遺伝子における点突然変異である;SSAの原因は知られていない。臨床診断は、生検材料においてインサイチューでアミロイドの沈着物を検出することにより組織学的に確立されている。
【0008】
今日まで、インビボでのTTRのアミロイドへの変換の機構についてほとんど知られていない。しかしながら、いくつかの研究室は、アミロイド変換が、インビトロで、正常なヒトTTRの部分的変性によりシミュレートされうることを実証した[McCutchen, Colon et al. (1993) Biochemistry 32(45):12119-27; McCutchen and Kelly (1993) Biochem Biophys Res Commun 197(2) 415-21]。立体構造転移の機構は、線状のβ-シート構造をもつアミロイド原繊維へ重合する単量体の立体構造的中間体を含む[Lai, Colon et al. (1996) Biochemistry 35(20):6470-82]。過程は、チロキシンまたはトリヨードフェノールのような安定化分子と結合することにより緩和されうる(Miroy, Lai et al. (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93(26):15051-6)。
【0009】
神経炎性プラークが形成される正確な機構、およびプラーク形成の疾患関連神経変性過程との関係は、はっきりしていない。アルツハイマー病およびプリオン病患者の脳におけるアミロイド原繊維は、結果として、ある特定の細胞の炎症性活性化を生じることが知られている。例えば、初代ミクログリア培養物およびTHP-1単球細胞系は、原繊維のβ-アミロイドおよびプリオンペプチドにより刺激され、同一のチロシンキナーゼ依存性炎症性シグナル伝達カスケードを活性化する。β-アミロイドおよびプリオン原繊維により誘発されたシグナル応答は、神経変性の一部原因である、神経毒性産物の生成へと導く。C.K. Combs et al., J Neurosci 19:928-39 (1999)。
【0010】
2. プリオン
プリオンは、ヒトおよび動物において中枢神経系海綿状脳症を引き起こす感染性病原体である。プリオンは、細菌、ウイルスおよびウイロイドとは異なる。可能性のあるプリオン前駆体は、PrP 27-30と呼ばれるタンパク質、感染した脳にプラークとして見出される棒状フィラメントへ重合する(凝集する)28kダルトンの疎水性糖タンパク質、である。正常なタンパク質相同体は、プリオンがプロテアーゼに非常に抵抗性であるのに対して、それは容易に分解可能である点でプリオンと異なる。プリオンは、従来のアッセイ方法Benjamin Lewin, Genes IV(Oxford Univ. Press, New York, 1990 p.1080)により検出できない、極少量の感染性の強い核酸を含みうることが示唆されている。目下の有力な仮説は、プリオンタンパク質の感染性に核酸成分は必要ないということである。
【0011】
完全なプリオンタンパク質をコードする遺伝子は、その後、クローニングされ、シーケンシングされ、トランスジェニック動物において発現された。PrPCは、単一コピーの宿主遺伝子によりコードされ、正常には、ニューロンの外側表面に見出される。翻訳後過程中、PrPScは、正常な細胞性PrPアイソフォーム(PrPC)から形成され、プリオン疾患は、PrPCのPrPScと呼ばれる修飾アイソフォームへの変換に起因する。PrPScは、動物およびヒトの伝染性神経変性疾患の伝染および病原性の両方に必要である。
【0012】
正常なプリオンタンパク質(PrP)は、図8に示されているように、大部分がα-ヘリックスおよびコイルドループ構造である細胞表面金属糖タンパク質であり、通常、中枢神経系およびリンパ系に発現される。抗酸化物として働くと考えられており、細胞恒常性と関連していると考えられる。しかしながら、PrPの異常型は、プロテアーゼに抵抗性である配座異性体であり、図9に示されているように、主に、それの二次構造においてβ-シートである。二次構造におけるこの立体構造変化は、プリオン病過程における凝集および結果として生じる神経毒性プラーク沈着へと導くと考えられている。
【0013】
プリオン関連疾患は、ヒツジおよびヤギのスクレーピー、シカおよびエルクの慢性消耗病、ならびにウシの牛海綿状脳症(BSE)を含む(Wilesmith, J. and Wells, Microbiol. Immunol. 172:21-38 (1991))。ヒトの4つのプリオン病が同定されている:(1)クールー、(2)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、(3)ゲルストマン-シュトラウスセラー-シャインケル疾患(GSS)、および(4)致死性家族性不眠症(FFI)(Gajdusek, D.C., Science 197:943-960 (1977); Medori et al., N. Engl. J Med. 326:444-449 (1992))。
【0014】
プリオン病は、伝染性かつ潜行性である。例えば、プリオン病に関連した長い潜伏時間は、世界中の死体供給HGHで処置された何千人という人々において数十年間、医原性CJDの完全な程度を明らかにしない。生物学的産物においてプリオンを検出することの重要性は、新しい変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(nvCJD)を発症したヒトへとウシプリオンが伝染したという可能性により高まった(G. Chazot et al., Lancet 347:1181 (1996); R.G. Will et al. Lancet 347:921-925 (1996))。
【0015】
プリオンにより引き起こされる疾患は、診断するのがむずかしい:疾患は潜伏性または無症状でありうる(異常なプリオンは検出できるが、症状は検出できない)。そのうえ、プリオン関連タンパク質の正常な相同体は、感染していない生物体の脳に存在し、さらに検出を複雑にしている。Ivan Roitt, et al., Immunology (Mosby-Year Book Europe Limited, 1993), 15.1。
【0016】
プリオン関連感染の存在を検出するために用いられる現行の技術は、脳における著しい形態変化、および症状が明らかになった後のみ一般的に適用される免疫化学的技術に頼っている。現行の検出方法の多くは、死亡した動物由来の脳組織を用いる抗体に基づいたアッセイまたはアフィニティークロマトグラフィーに、場合によっては、血液試料のキャピラリー免疫電気泳動に、頼っている。
【0017】
脳組織に基づいたアッセイは、遅い検出へと導きうり、検査されるべき動物を屠殺する必要がある。プリオニックチェック(Prionic-Check)もまた、ウェスタンブロットを用いる抗体にかけられる、液化された脳組織試料を得るために動物を屠殺することを必要とする。結果は、6〜7時間で得られるが、検査は、脳におけるPrPS蓄積と臨床症状の発生の間の6ヶ月の時間のずれを考慮しない。扁桃生検試料採取ならびに血液および脳脊髄の試料採取が、正確であるとはいえ、外科的介入を必要とし、結果を得るのに何週間もかかりうる。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)、核磁気共鳴NMR、円偏光二色性(CD)、および他の非増幅構造的技術は、大量の試料、および典型的には、試料供給源からかなり遠方に位置している高価な装置を必要とする。
【0018】
アルツハイマー病およびCAAのような前述の疾患に関連した立体構造的に変化したタンパク質についての検出方法はまた、前に述べられたプリオン検出技術と同様に、それらがしばしば、死後組織試料採取を必要とする点において不適当である。
【0019】
従って、立体構造的に変化したタンパク質およびプリオンについての信頼性がありかつ手頃な価格の検出方法に対して必要性が存在している。そのような方法は、迅速な診断を得て、予防的または治療的処置を促進するために、問題になっている被験体の生涯の間に適用できるべきである。
【発明の開示】
【0020】
発明の概要
本発明は、様々な疾患に関連している立体構造的に変化したタンパク質およびプリオンの検出のための信頼性のある、手頃な価格で、安全な方法を提供する。本発明の方法は、迅速な診断を得て、予防的または治療的処置を促進するために適用されうる。注目に値すべきなのは、本発明の方法は、少量の試料を用い、それゆえに、公知の診断技術より侵襲性が少なく、より容易に適用される。さらに、本発明の方法は、生きている被検体からの試料を分析するために用いられうり、死後得られる試料に限定されない;感染性材料が検査中に増殖されないことを保証する方法で利用されうる。
【0021】
本発明は、伝染性海綿状脳症(TSE)のような特定の疾患過程に関連した立体構造的に変化したタンパク質またはプリオンにおける立体構造変化を利用するために触媒的増殖を用いることにより、先行技術の診断技術に関連した問題の多くを克服する。触媒的増殖は、試料における存在する立体構造変化したタンパク質断片またはプリオンの数を増幅するために用いられうり、検出可能な凝集体を以下のように形成させる:
【0022】
立体構造的に変化したタンパク質またはプリオンを含む試料の下に定義されている立体構造的プローブとの相互作用において、プローブは、立体構造変化を起こし、立体構造的に変化したタンパク質(可溶性または不溶性でありうる)またはプリオン、の立体構造、および、との凝集体、の形をとる。ββシート形成を示す、結果として生じた凝集体は、標準的分析技術を用いて容易に検出されうる。結果として、本発明は、小さな試料サイズの迅速かつ費用効率が高い分析を促進し、限定されるわけではないが、脳を含む様々な源からの組織および体液に広く適用できる。
【0023】
本発明は、低密度リポタンパク質受容体、嚢胞性線維症膜制御因子、ハンチンチン、Aβペプチド、プリオン、インスリン関連アミロイド、ヘモグロビン、αシヌクレイン、ロドプシン、クリスタリン、およびp53のような疾患関連の立体構造的に変化したタンパク質の少量の検出を可能にする。好ましい態様において、本発明の方法は、本明細書に別に記載されているパリンドロームのプローブ、例えば、試料においてプリオンを検出するためのPrP(Sc)タンパク質のアミノ酸配列126〜104位および109〜126位を含むパリンドロームの33-merのプローブ、を用いる。好ましい態様において、プローブは、プローブのβ-シート構造への立体構造変換により、光学的に異なって、検出可能である部分に、各末端で結合している。
【0024】
一つの態様において、本発明は、以下の段階を含む、試料において立体構造的に変化したタンパク質またはプリオンを検出するための方法を提供する:(a)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それにより、(i)大部分がββ-シート立体構造への立体構造変換を起こす、および(ii)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つまたは複数のα-ヘリックスまたはランダムコイルの立体構造的プローブと試料を反応させる段階;ならびに(b)検出可能な凝集体のレベルを検出する段階であって、検出可能な凝集体のレベルが、試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンのレベル、および試料の感染性と相関している、段階。
【0025】
本発明はまた、被検体が立体構造的に変化したタンパク質またはプリオンに関連した疾患に罹っているかどうか、または罹りやすいかどうかを診断する方法に加えて、これらの方法を用いるキットを提供する。
【0026】
本発明のキットは、試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それにより、(i)大部分、ββ-シート立体構造への立体構造変換を起こす、および(ii)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つまたは複数のα-ヘリックスまたはランダムコイルの立体構造的プローブを含む。キットはさらに、プローブ末端に結合する、または結合している、かつ大部分のββ-シート立体構造へのプローブの立体構造変換により光学的に検出可能である部分、加えて、キットを用いるための使用説明書、および試料を懸濁するまたは固定させるための溶液、を含む。
【0027】
被検体が立体構造的に変化したタンパク質またはプリオンに関連した疾患に罹っているかどうか、または罹りやすいかどうかを診断する方法は、以下の段階を含む:
(a)被検体から試料を得る段階;
(b)試料における不溶性タンパク質またはプリオンのββ-シート立体構造と相互作用し、それにより、(i)好ましくは、大部分がββ-シート立体構造への立体構造変換を起こす、および(ii)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つまたは複数のα-ヘリックスまたはランダムコイルの立体構造的プローブと試料を反応させる段階;ならびに
(c)検出可能な凝集体のレベルを検出する段階であって
検出可能な凝集体のレベルが、試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンの量、および試料の感染性のレベルと相関しており、被検体がββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンに関連した疾患に罹っているかどうか、または罹りやすいかどうかを示す、段階。
【0028】
本発明のこれらを始めとする局面は、以下の詳細な説明にさらに記載されている。
【0029】
発明の詳細な説明
本明細書に用いられる場合、以下の用語は、以下のそれぞれの意味をもつ。
【0030】
「アミロイド形成的疾患」とは、アミロイドプラークまたはアミロイド沈着物が身体に形成される疾患である。アミロイド形成は、糖尿病、アルツハイマー病(AD)、スクレーピー、ゲルストマン-シュトラウスセラー-シャインケル(GSS)症候群、牛海綿状脳症(BSE)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、慢性消耗病(CWD)、および関連した伝染性海綿状脳症(TSE)のような多数の疾患に見出される。
【0031】
TSEは、CJD、クールー、致死性家族性不眠症およびGSSのようなヒト疾患を含む致死性神経変性疾患である。TSEの動物型は、ヒツジにおけるスクレーピー、シカおよびエルクにおけるCWD、ならびにウシにおける牛海綿状脳症を含む。これらの疾患は、正常なプロテアーゼ感受性宿主コード化プリオンタンパク質(PrP-sen)の異常なプロテイナーゼK抵抗性アイソフォーム(PrP-res)の脳における形成および蓄積を特徴とする。PrP-resは、より高いβ-シート含有量を有するPrP-res分子凝集体へPrP-senを変換する立体構造変化を含む翻訳後過程によりPrP-senから形成される。PrP-resのこれらの巨大分子凝集体の形成は、PrP-resのアミロイド沈着物が脳において形成され、最終的には「海綿状」(穴で満たされている)になる、TSE媒介性脳病理学と密接に関連している。
【0032】
TSE疾患は、普通ではない動因への曝露により、例えば、ニューギニアのForet族における儀式としての食人風習、または牛海綿状脳症(BSE)におけるウシへの動物部分の給餌により、伝染するように思われ、医原性CJDもまた、死体の下垂体由来のヒト成長ホルモンの投与、移植された硬膜、および角膜移植片、加えて、外科医の神経学的処置中の罹患組織への曝露により引き起こされた。
【0033】
未変性プリオンタンパク質(PrP)の存在は、TSEの病原性に必須であることが示されている。細胞タンパク質PrP-senは、ヒトにおいて第20染色体上に位置している遺伝子によりコードされるシアロ糖タンパク質である。PrP遺伝子は、神経系および非神経系組織に発現されており、それのmRNAの最高濃度はニューロンにある。PrP遺伝子の翻訳産物は、ヒトで253個のアミノ酸、ハムスターおよびマウスで254個、ウシで264個のアミノ酸、ならびにヒツジで256個のアミノ酸からなる(これらの配列のすべては、種特異的PrPを発現させるトランスジェニックマウスを作製する方法を記載する、米国特許第5,565,186号に開示されている)。プリオンタンパク質関連脳症において、細胞PrP-senは、PrP-resが凝集する点においてPrP-senと区別できる(Caughey and Chesebro, 1997, Trends Cell Biol. 7, 56-62);PrP-senが完全に分解される条件下においてプロテイナーゼK消化によりおよそN末端67個のアミノ酸のみが除去される点でプロテイナーゼK抵抗性である(Prusiner et al., 1996, Sem. Virol. 7, 159-173);ならびに、PrP-senについてのα-ヘリカル立体構造の量が低下しており、かつPrP-resについてのβ-シート立体構造の量が増加している(Pan et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 10962-10966)、タンパク質立体構造における変化をもつ、変化したPrP-resへ変換される。
【0034】
PrP-senが、スクレーピー感染した神経移植片の動物レシピエントの脳組織に発現されていない場合には、移植片の外側に病態は起こらず、PrP-resおよびPrP-senの両方が病態に必要とされることを実証している(Brander et al., Nature 379:339-343, 1996)。感染と疾患の出現の間の長い潜伏期間(種に依存して何ヶ月〜何十年)は、PrP-resがPrP-senのPrP-resへの変換を誘発する無細胞インビトロ試験の開発を促した(Kocisko et al., Nature 370:471-474, 1994)。Prusiner et al., 1997年5月9日に公開されたWO 97/16728も参照されたい。これらのインビボおよびインビトロ観察は、PrP-resとPrP-senの間の直接的相互作用がPrP-resを形成し、かつTSE病原性を促進することを示している。
【0035】
特定のPrP配列を含む小さな合成ペプチドは、自発的に凝集して、TSE罹患脳の不溶性沈着物に見られる型の高程度のβ-シート二次構造をもつ原繊維を形成することが以前に示された(Gasset et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 10940-10944; Come et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 5959-5963; Forloni et al., 1993, Nature 362, 543-546; Hope et al., 1996, Neurodegeneration 5, 1-11)。さらに、他の合成PrPペプチドは、PrP-sen分子と相互作用して、増加したプロテアーゼ抵抗性をもつ凝集された複合体を形成することが示された(Kaneko et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92, 11160-11164, 1995; Kaneko et al., J. Mol. Biol. 270, 574-586, 1997)。
【0036】
「立体構造的に変化したタンパク質」は、疾患に関連した3次元立体構造をもつ任意のタンパク質を含む。立体構造的に変化したタンパク質は、疾患を引き起こしうる、疾患の症状における因子でありうる、または他の因子の結果として、試料にもしくはインビボで現れうる。立体構造的に変化したタンパク質は、同じアミノ酸配列をもつもう一つの立体構造に現れる。これらの立体構造的に変化したタンパク質は、一般的に、本発明において分析されるββ-シート形成を示す不溶性タンパク質の形をとっている。
【0037】
以下は、後に挿入句的に、少なくとも1つの立体構造が立体構造的に変化したタンパク質の例である、集合して2つ以上の異なる立体構造を構築する関連不溶性タンパク質が続く、疾患の非限定的リストである:アルツハイマー病(APP、Aβペプチド、α1-抗キモトリプシン、タウ、非Aβ成分、プレセニリン1、プレセニリン2アポE);プリオン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、スクレーピーおよび牛海綿状脳症(PrPSc);ALS(SODおよび神経フィラメント);ピック病(ピック小体);パーキンソン病(レヴィー小体におけるα-シヌクレイン);前頭側頭認知症(原繊維におけるタウ);糖尿病II型(アミリン);多発性骨髄腫-プラズマ細胞疾患(IgGL鎖);家族性アミロイドポリニューロパシー(トランスチレチン);甲状腺髄様癌(プロカルシトニン);慢性腎不全(β2-ミクログロブリン);鬱血性心不全(心房性ナトリウム利尿因子);老人性心臓全身性アミロイドーシス(トランスチレチン);慢性炎症(血清アミロイドA);アテローム性動脈硬化症(アポA1);家族性アミロイドーシス(ゲルゾリン);ハンチントン病(ハンチンチン)。
【0038】
「不溶性タンパク質」は、アミロイド形成的疾患に関連した任意のタンパク質を含み、限定されるわけではないが、前の段落に同定されたタンパク質のいずれかを含む。不溶性タンパク質は、一般的に、凝集体においてββ-シート形成を示す。
【0039】
「PrPタンパク質」、「PrP」などは、本明細書で交換可能に用いられ、ヒトおよび動物において疾患を引き起こすことが知られている感染性粒子型PrPSc、ならびに適切な条件下において感染性PrPSc型へ変換される非感染性型PrPCの両方を意味する。
【0040】
用語「プリオン」、「プリオンタンパク質」、「PrPScタンパク質」などは、本明細書で交換可能に用いられ、PrPタンパク質の感染性PrPSc型を指す。「プリオン」は、語「タンパク質」および「感染」の短縮形である。粒子は、独占的ではないにしても、主として、PrP遺伝子によりコードされるPrPSc分子から構成される。プリオンは、細菌、ウイルスおよびウイロイドとは異なる。公知のプリオンは動物を感染させ、スクレーピー、ヒツジおよびヤギの伝染性の神経系の変性疾患、加えて、牛海綿状脳症(BSE)、すなわち「狂牛病」、およびネコの猫海綿状脳症を引き起こす。ヒトを冒すことが知られている4つのプリオン病は、(1)クールー、(2)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、(3)ゲルストマン-シュトラウスセラー-シャインケル疾患(GSS)、および(4)致死性家族性不眠症(FFI)である。本明細書に用いられる場合、「プリオン」は、用いられる任意の動物において -- 特に、ヒトおよび飼い慣らされた家畜において、これらを始めとする疾患の全部またはいずれかを引き起こすプリオンのすべての型を含む。
【0041】
用語「PrP遺伝子」は、公知の多型および病原性突然変異を含むタンパク質を発現させる遺伝物質を記載するために本明細書に用いられる。用語「PrP遺伝子」は、一般的に、プリオンタンパク質の任意の型をコードする任意の種の任意の遺伝子を指す。PrP遺伝子は、任意の動物由来でありうり、そのすべての多型および突然変異を含み、その用語が、いつかは発見されうる他のそのようなPrP遺伝子を含むことは認識されている。そのような遺伝子により発現されるタンパク質は、PrPC(非疾患)かまたはPrPSc(疾患)型のいずれかを想定できる。
【0042】
「ペプチド模倣体」は、別の生物活性ペプチド分子の活性を模倣する生体分子である。
【0043】
「タンパク質」は、ペプチド結合を介して連結されている2個以上の個々のアミノ酸(天然に存在するかどうかを問わず)の任意の重合体を指し、1個のアミノ酸(またはアミノ酸残基)のα-炭素に結合したカルボン酸基のカルボキシル炭素原子が、隣接したアミノ酸のα-炭素に結合したアミノ基のアミノ窒素原子へ共有結合性に結合する場合、生じる。これらのペプチド結合連鎖、およびそれらを含む原子(すなわち、α-炭素原子、カルボキシ炭素原子(およびそれらの置換基酸素原子)、ならびにアミノ窒素原子(およびそれらの置換基水素原子))は、タンパク質の「ポリペプチドバックボーン」を形成する。最も単純な用語において、ポリペプチドバックボーンは、タンパク質のアミノ窒素原子、α-炭素原子、およびカルボキシル炭素原子を指すように理解されるだろうが、これらの原子(それらの置換基原子の有無を問わず)の2個以上はまた、偽原子として表されうる。実際、本明細書に記載されているような機能部位記述子に用いられうるポリペプチドバックボーンの任意の表示は、用語「ポリペプチドバックボーン」の意味の範囲内に含まれると理解されるものと思われる。
【0044】
用語「タンパク質」は、それの意味の範囲内に、用語「ポリペプチド」および「ペプチド」(時々、本明細書で交換可能に用いられうる)を含むように理解される。さらに、複数のポリペプチドサブユニット(例えば、DNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼII)または他の成分(例えば、テロメラーゼに存在するようなRNA分子)を含むタンパク質もまた、本明細書に用いられる場合、「タンパク質」の意味の範囲内に含まれるように理解されるものと思われる。同様に、タンパク質およびポリペプチドの断片もまた、本発明の範囲内であり、「タンパク質」と本明細書で呼ばれうる。
【0045】
「立体構造」または「立体構造制約」は、特定のタンパク質立体構造の存在、例えば、α-ヘリックス、平行および逆平行βストランド、ロイシンジッパー、ジンク・フィンガーなど、を指す。さらに、立体構造制約は、追加の構造的情報なしのアミノ酸配列情報を含みうる。例として、「--C--X--X--C--」は、2個のシステイン残基が2個の他のアミノ酸残基により分離されていなければならないことを示す立体構造制約であり、それらのそれぞれの同定は、この特定の制約に関連しては、無関係である。「立体構造変化」は、一つの立体構造からもう一つの立体構造への変化である。
【0046】
タンパク質の配列が正しい折り畳みをコードする正確な機構は知られていない。折り畳みによりコードされる天然状態に達するために、タンパク質分子は、多くの選択肢から選択された固有の立体構造へ変換しなければならない。機能性タンパク質は、典型的には、可溶性であり、コイルおよび規則正しい要素を含む様々な構造をとりうる。規則正しい要素は、ミオグロビンおよびヘモグロビンのようなタンパク質に優勢であるα-ヘリックスを含む。ヒトの老化過程中、いくつかのタンパク質において、可溶性構造(例えば、α-ヘリックス領域)が、機能の喪失と関連した凝集を起こすβ-シート構造へ立体構造的に変化する。
【0047】
立体構造的に変化した状態をとる場合にヒト疾患に関連している、少なくとも20個のタンパク質があり、これらの一部は、前に記載されている。図1は、TSE配座異性体のα-ヘリックス単量体10型およびβ-シート二量体12型の両方を示している。プリオンタンパク質の正常な野生型(wt)(PrPC)は、単量体状態を好み、一方、異常な疾患原因型(PrPSc)はより容易に多量体状態を呈する。
【0048】
タンパク質構造は、様々な実験的または計算論的方法により決定されうり、いくつかは下に記載されている。タンパク質構造は、少なくとも低分解能構造を作成することができる任意の方法により実験的に評価されうる。そのような方法は、現在、X線結晶構造解析および核磁気共鳴(NMR)分光法を含む。X線結晶構造解析は、タンパク質構造評価のための一つの方法であり、結晶における原子核を囲む電子雲による特性波長のX線放射の回折に基づいている。X線結晶構造解析は、特定の生体分子を作り上げている原子の本物に近い原子分解を決定するために精製された生体分子(しかし、これらは、しばしば、溶媒成分、補助因子、基質、または他のリガンドを含む)の結晶を用いる。結晶成長のための技術は、当技術分野において公知であり、典型的には、生体分子によって異なる。自動化結晶成長技術もまた公知である。
【0049】
核磁気共鳴(NMR)は、現在、生体分子の溶液立体構造(結晶構造よりむしろ)の決定を可能にする。典型的には、低分子、例えば、約100〜150個未満のアミノ酸のタンパク質、のみがこれらの技術を受け入れられる。しかしながら、最近の進歩は、同位体標識のような技術を用いて、より大きなタンパク質の溶液構造の実験的解明へと導いた。X線結晶構造解析を凌ぐNMR分光法の利点は、格子隣接相互作用がタンパク質構造を変化させうる場合には、構造が、結晶格子においてよりむしろ溶液において決定されることである。NMR分光法の欠点は、NMR構造が、結晶構造ほど詳細または正確ではないことである。一般的に、NMR分光法により決定された生体分子構造は、結晶構造解析により決定されたものに対して比較された中位の分解能である。
【0050】
生体分子構造を研究するにおいて有用な他の技術は、円偏光二色性(CD)、蛍光、および紫外線可視吸収分光法を含む。これらの技術の説明について、例えば、Physical Biochemistry: Applications to Biochemistry and Molecular Biology, 2.sup.nd ed., W.H. Freeman & Co., New York, N.Y., 1982を参照されたい。
【0051】
「等価の」とは、分析されるべきタンパク質のアミノ酸配列に配列において類似しているが、少なくとも1つであるが、5つより少ない(例えば、3つ以下)違い、置換、付加または欠失を有するアミノ酸配列を指す。従って、本文中での使用の範囲内におけるそのアミノ酸の基本的な機能を実質的に変化させない、与えられた配列における1個以上のアミノ酸の置換は、本発明を記載する目的のために、等価である。
【0052】
「相同性」、「の相同体」、「相同の」、または「同一性」もしくは「類似性」は、2つのポリペプチド間の配列類似性を指し、同一性は、よりきびしい比較である。相同性および同一性は、それぞれ、比較の目的のために整列されうる各配列における位置を比較することにより決定されうる。比較される配列における位置が、同じアミノ酸により占有されている場合には、分子はその位置において同一である。アミノ酸配列の同一性の程度は、アミノ酸配列により共有される位置における同一のアミノ酸の数の関数である。アミノ酸配列の相同性または類似性の程度は、アミノ酸配列により共有される位置におけるアミノ酸、すなわち構造的に関連したアミノ酸の数の関数である。「関連のない」、または「非相同の」配列は、本発明に用いられる配列の1つと、40%未満の同一性、もっとも、好ましくは25%未満の同一性ではあるが、を共有する。関連した配列は、40%より多い同一性、好ましくは少なくとも約50%同一性、より好ましくは少なくとも約70%同一性、よりいっそう好ましくは少なくとも約90%同一性、より好ましくは少なくとも約99%同一性を共有する。
【0053】
用語「パーセント同一の」とは、2つのアミノ酸配列間の配列同一性を指す。同一性は、それぞれ、比較の目的のために整列されうる各配列における位置を比較することにより決定されうる。比較される配列における等価の位置が同じアミノ酸により占有されている場合には、分子はその位置において同一である;等価の部位が、同じまたは類似したアミノ酸残基(例えば、立体的および/または電気的性質において類似した)により占有されている場合には、分子はその位置において相同的(または類似的)と呼ばれうる。相同性、類似性、または同一性のパーセンテージとしての表示は、比較される配列により共有される位置における同一または類似したアミノ酸の数の関数を指す。様々なアラインメントアルゴリズムおよび/またはプログラムが用いられうり、FASTA、BLASTまたはENTREZを含む。FASTAおよびBLASTは、GCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一部として利用可能であり、例えば、デフォルト設定で用いられうる。ENTREZは、National Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine, National Institutes of Health, Bethesda, Mdを通して利用可能である。一つの態様において、2つの配列のパーセント同一性は、1のギャップ重み、例えば、各アミノ酸ギャップが、あたかもそれが2つの配列間でただ1つのアミノ酸不一致であったかのように重み付けされる、でのGCGプログラムにより、決定されうる。配列同一性を決定するための他の技術は、周知であり、当技術分野において記載されている。
【0054】
本明細書に用いられる場合の用語「相互作用する」とは、天然における、タンパク質-タンパク質、タンパク質-核酸、核酸-核酸、およびタンパク質-低分子、または核酸-低分子の間の相互作用のような、分子間の検出可能な相互作用(例えば、生化学的相互作用)を含むことを意図される。
【0055】
用語「不溶性タンパク質の相同体」は、不溶性タンパク質遺伝子の相同体によりコードされるすべてのアミノ酸配列、およびそのような配列に等価または相同であるすべてのアミノ酸配列を含む。それゆえに、「不溶性タンパク質の相同体」は、Pfamファミリーにおいてヒットとして得点化されるタンパク質を含む。タンパク質配列において「不溶性タンパク質」ドメインの存在を同定する、および対象となるポリペプチドまたはタンパク質が特定のプロファイルを有すると決定するために、タンパク質のアミノ酸配列は、様々なデフォルトパラメーターを用いていくつかのデータベース(例えば、SwissProt, PIR)の1つに対して検索されうる(http://www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/HMM_search)。例えば、hmmsfプログラムは、検索プログラムのHM_MERパッケージの一部として利用できるのだが、MILPAT0063についてのファミリー特異的デフォルトプログラムであり、15のスコアがヒットを決定するためのデフォルト閾値スコアである。または、ヒットを決定するための閾値スコアは低下させられうる(例えば、8ビットまで)。Pfamデータベースの説明は、Sonham_mer et al. (1997) Proteins 28(3):405-420に見出されうり、HMMの詳細な説明は、例えば、Gribskov et al. (1990) Meth. Enzymol. 183:146-159; Gribskov et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:4355-4358; Krogh et al. (1994) J. Mol. Biol. 235:1501-1531; およびStultz et al. (1993) Protein Sci. 2:305-314に見出されうるが、それらの内容は、参照により本明細書に組み入れられている。
【0056】
「検体」は、検査されるべき材料の試料である。試料は、ガラスホモジナイザーにおけるホモジナイゼーションにより組織(例えば、挽肉の一部、生検手順により得られた組織の量)から調製されうる。材料の量は、約1 mgと1 gmの間、好ましくは10 mgと250 mgの間、理想的には20 mgと100 mgの間であるべきである。試料採取されうる材料は、適した溶媒、好ましくは、7.0と7.8の間のpHにおけるリン酸緩衝食塩水、に懸濁されうる。溶媒は、トリトンX-100、SDS、またはサルコシルのような界面活性剤を含みうる。ホモジナイゼーションは、ホモジナイザーのいくつかのエクスカーション、好ましくは10ストロークと25ストロークの間;理想的には15ストロークと20ストロークの間、について行われる。懸濁された試料は、好ましくは、100 gと1,000 gの間で5〜10分間、遠心分離され、上清材料は分析のために試料採取される。いくつかの試料において、Safar et al., Nature Medicine 4, pp.1157-1165 (1998)により記載された手順に従って、およびWadsworth et al. The Lancet, 358, pp.171-180 (2001)により改変されているように、上清材料をリンタングステン酸のような追加の試薬で処理することが好ましい場合がある。
【0057】
検査されるべき試料の量は、Bradford (1976)により記載された手順により測定されるような上清溶液のタンパク質含有量の測定に基づいている。好ましくは、これは、タンパク質の0.5 mgと2 mgの間に相当する。
【0058】
組織材料について上記の手順に加えて、検査試料は、血清、動物起源の産物を含みうる薬学的製剤、髄液、唾液、尿または他の体液から得られうる。液体試料は、直接的に検査されうる、または上記のようなリンタングステン酸のような薬剤での処理にかけられうる。
【0059】
「立体構造的プローブ」は、好ましくは、標的タンパク質におけるペプチドの一部と、類似している、およびより好ましくは同一である、アミノ酸配列を有する、かつまた、標的タンパク質(不溶性タンパク質)と複合体化された場合、立体構造変化を起こして、ββ-シート形成を生じる可能性をもつ、ペプチドである。そのような変化は、典型的には、プローブにより通常では証明されないβシート構造へと導く。理想的には、プローブは、標的タンパク質由来の2つのアミノ酸配列を有するパリンドロームの構造をもつ。本発明に有用である好ましいα-ヘリックスまたはランダムコイル立体構造的プローブ(すなわち、溶液中でα-ヘリックスまたはランダムコイル立体構造を示すプローブ)は、以下を含む:
【0060】
PrPScタンパク質(SEQ ID NO:13および14)(Swiss-Prot PO4156(Pfam ID Prion Pf00377 & 03991)のアミノ酸122位〜104位および109位〜122位と同一であるアミノ酸配列を含むパリンドロームの33-mer
【0061】
PrPScタンパク質(SEQ ID NO:13および14)(Swiss-Prot PO4156(Pfam ID Prion Pf00377 & 03991)のアミノ酸122位〜104位および109位〜122位と等価であるアミノ酸配列を含むパリンドロームの33-mer
【0062】
PrPScタンパク質(SEQ ID NO:13および14)(Swiss-Prot PO4156(Pfam ID Prion Pf00377 & 03991)のアミノ酸122位〜104位および109位〜122位と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含むパリンドロームの33-mer
【0063】
Aβペプチド(Nref 00111747(ヒト))のアミノ酸1位〜40位と同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0064】
Aβペプチド(Nref 00111747(ヒト))のアミノ酸1位〜40位と等価であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0065】
Aβペプチド(Nref 00111747(ヒト))のアミノ酸1位〜40位と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0066】
Aβペプチド(Nref 00111747(ヒト))のアミノ酸11位〜34位と同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0067】
Aβペプチド(Nref 00111747(ヒト))のアミノ酸11位〜34位と同一であるが、金属イオン相互作用を低下させ、かつペプチドの溶解度を増加させるためにRで置換された残基H13を含む、アミノ酸配列を含むプローブ
【0068】
Aβペプチド(Nref 00111747(ヒト))のアミノ酸25位〜35位と同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0069】
ポリリジンに見出されるヘリックス-ループ-ヘリックス立体構造、および、長さが少なくとも10個のアミノ酸残基であり、かつSEQ ID NO:8と等価または相同であるアミノ酸配列を有するプローブ
【0070】
ポリグルタミンに見出される立体構造、およびSEQ ID NO:9と等価または相同であるアミノ酸配列を有するプローブ
【0071】
野生型(wt)TSE(Human NREF 00130350)のアミノ酸104位〜122位と相同であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0072】
野生型(wt)TSE(Human NREF 00130350)のアミノ酸104位〜122位と等価であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0073】
野生型(wt)TSE(Human NREF 00130350)のアミノ酸配列104位〜122位と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0074】
(a)選択的に突然変異したTSE配列である;(b)不安定にされ、かつ非感染性である;および(c)野生型(wt)TSE(Human NREF 00130350)のアミノ酸配列104位〜122位と相同であるアミノ酸配列を有する、アミノ酸配列を含むプローブ
【0075】
(a)選択的に突然変異したTSE配列である;(b)不安定にされ、かつ非感染性である;および(c)野生型(wt)TSE(Human NREF 00130350)のアミノ酸配列104位〜122位と等価であるアミノ酸配列を有する、アミノ酸配列を含むプローブ
【0076】
(a)選択的に突然変異したTSE配列である;(b)不安定にされ、かつ非感染性である;および(c)野生型(wt)TSE(Human NREF 00130350)のアミノ酸配列104位〜122位と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を有する、アミノ酸配列を含むプローブ
【0077】
ヒト糖尿病に結びつけられるヒト島アミロイドポリペプチド前駆体(アミリン)タンパク質(アクセッション番号NP_000406(ヒト))のアミノ酸1位〜38位と同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0078】
ヒト糖尿病に結びつけられるヒト島アミロイドポリペプチド前駆体(アミリン)タンパク質(アクセッション番号NP_000406(ヒト))のアミノ酸1位〜38位に対応する配列内の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基と同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0079】
ヒト乳児SIDSに結びつけられるヒト肺表面活性剤タンパク質(NCBIアクセッション番号AAH32785(ヒト))のアミノ酸1位〜25位と同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0080】
PrPScタンパク質(SEQ ID NO:13および14)(Swiss-Prot PO4156(Pfam ID Prion Pf00377 & 03991)のヒトのアミノ酸104位〜122位またはマウスのアミノ酸103位〜121位の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ
【0081】
ヒト血漿ゲルゾリン(SEQ ID NO:15)(P06396), Maury, et al. FEBS Lett., 260(1), pp. 85-87 (1990)のアミノ酸235位〜269位(下で強調されている)の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ;
YERLKATQVSKGIRDNERSGRARVHVSEEGTEPEAM (SEQ ID NO:16);
【0082】
下に描かれたシスタチンCタンパク質配列(SEQ ID NO:17)(P01034), Levy, et al. J. Exp. Med., 169(5), pp. 1771-8 (1989)のアミノ酸27位〜146位(下で強調されている)の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ。ペプチドのアミロイド形成型は、下のアミノ酸残基27位〜146位に対応する120個のアミノ酸である。適切なプローブは、少なくとも10個のアミノ酸のその任意の部分であり、多数のプローブがそれに応じて仮定されうる;
【0083】
シスタチンCタンパク質のパリンドロームのプローブ(4単位プロリンリンカーを含む上記配列のアミノ酸39位〜47位)
【0084】
下に描かれたハンチンチン(ハンチントン病タンパク質)タンパク質配列(SEQ ID NO:19)(P42858)[gi:1170192]の少なくとも10個でかつ23個までの連続したグルタミンアミノ酸残基オリゴまたはポリグルタミン(残基18位〜40位):
【0085】
例示的なプローブ:
【0086】
原繊維形成に結びつけられるヒト島アミロイドポリペプチド、下に描かれた配列(SEQ ID NO:21)NP_000406 [gi:4557655] Scrocchi, et al., J. Struct. Biol., 141(3), pp. 218-27 (2003)、の(8位〜20位)ドメインのアミノ酸残基12位〜17位および15位〜20位(下で強調されている)の少なくとも6個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ。
【0087】
例示的なプローブは、上記ペプチド配列の配列8位〜20位内の最小配列である以下の配列を含み、改変なしに用いられうる、または本発明のパリンドロームのプローブを形成するために用いられうる:
【0088】
トランスチレチンのペプチド断片、下に描かれた配列(SEQ ID NO:26) AAH20791 [gi:18089145] MacPhee and Dobson, J. Mol. Biol., 297(5), pp. 1203-15 (2000)、のアミノ酸残基10位〜19位(下で強調されている)の少なくとも5個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ
【0089】
上で参照された配列(アミノ酸残基10位〜19位)に基づいたパリンドロームのプローブ:
【0090】
多数の他のプローブは、標準的実験室技術およびペプチドおよび関連した化学合成を用いて過度の実験なしに容易に作製されうる。
【0091】
プローブの天然の立体構造は、特に、円偏光二色性、フーリエ変換赤外、紫外線、核磁気共鳴、または蛍光のような1つまたは複数の分光学的方法により決定される。下記のような溶媒中のこの立体構造は、α-ヘリックスまたはランダムコイルのそれに対応するべきである(例えば、円偏光二色性において、スペクトルの性質は、立体構造を示す)。
【0092】
プローブは、光学的手段により検出できる置換基を含むように修飾される。そのような置換基は、トリプトファン(アミノ酸)、ピレンまたは類似したフルオロファオを含みうり、すべては、ペプチドプローブの末端位置において、またはの近くに、付着している。そのようなフルオロファオの付着は、当技術分野において周知である通常の化学的方法に従って行われるが、必ずしも、フルオロファオのプローブへの共有結合性付着によるとは限らない。理想的には、置換基は、エキシマーとして知られている種を生成するような様式で相互作用する能力をもつ。エキシマーは、特定の波長の光での励起により、単独で作用するいずれかのフルオロファオにより放射されるものとも大きさが異なる、異なる波長の光を放射する2つのフルオロファオの相互作用を示す。従って、そのようなエキシマーの形成を可能にする立体構造的プローブの構造変化は、光学的性質における変化により検出されうる。そのような変化は、プローブに付着したフルオロファオに依存して、多数ある中でも、UV、IR、CD、NMRまたは蛍光を含む公知の蛍光定量的技術により測定されうる。これらの変化の大きさは、プローブが立体構造変化を起こした程度に関連している。
【0093】
もう一つの態様において、プローブは、放射性物質で置換されうる。理想的には、これは、この目的のために現在、用いられている機械により検出されうる十分なエネルギーの陽電子放射であるべきである。そのような実体は、好ましくは、酸素-15(陽電子放射により崩壊する酸素の同位元素)または他の放射性核種を含む。この態様において、放射性標識プローブは、患者へ注入されうり、プローブのタンパク質標的への結合が外部からモニターされうる。
【0094】
プローブは、溶液中でランダムコイルまたはα-ヘリックス立体構造を示す少なくとも5個、好ましくは約10個以上のアミノ酸残基のペプチドまたはペプチド模倣体を含みうる。ペプチドまたはペプチド模倣体プローブ溶媒は、水性で、約4と約10の間、好ましくは約5と約8の間のpHをもちうり、約0.05と約0.5の間のイオン強度をもちうる(典型的には、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムのような塩化物塩で調製される場合)。溶媒はまた、容量で約30%〜約70%、好ましくは約45%〜約60%、の量のトリフルオロエタノールのような水混和性有機物質のパーセンテージを含みうる。溶媒は、酢酸塩/酢酸、トリス、またはリン酸塩のような適した緩衝系で調製されうる。
【0095】
プローブアミノ酸の配列は、分析されるべき標的タンパク質の性質から決定され、通常、α-ヘリックスまたはコイルのいずれかからβ-シートへの構造転移を起こすことが知られている標的の領域を含む。立体構造的プローブ配列は、理想的には、好ましくは長さが約10個と25個の間のアミノ酸;より好ましくは、長さが約14個と20個の間のアミノ酸の、対象となる標的配列の2つの繰り返しを含む。これらは、好ましくは、図10に示されているようなパリンドロームを形成するようにプローブにおいて配置される。
【0096】
本発明の方法およびキットに用いられる好ましいプローブは、分析されるべきタンパク質のβ-シート領域に対応するアミノ酸配列を有する。これらのプローブは、好ましくは、長さが少なくとも5個のアミノ酸単位であり、長さが約300〜400個のアミノ酸単位(-mer)またはそれ以上でありうるが、好ましくは、これらは、約10アミノ酸〜約50アミノ酸長である。本発明の特定の局面において、β-シート領域に対応する好ましいプローブは、約15-mer〜約100-merであり、他において、好ましいプローブは、約20-merから約50-merまでの範囲でありうる。与えられたプローブの好ましい長さは、標的タンパク質と複合体化し、ββ-シート形成を生じるプローブ能力の機能である。
【0097】
本発明で用いるプローブは、すでに存在している配列データベースにおける既存の情報から容易に決定される、または代わりとして、経験的に容易に決定されうる。従って、プローブは、一般的に、最小数のアミノ酸、好ましくは少なくとも10個、およびより好ましくは約10〜25個のアミノ酸に対応し、不溶性タンパク質においてα-ヘリックスまたはランダムコイルからββ-シートへの立体構造転移を起こす標的タンパク質のペプチド配列の少なくとも一部に対応する。
【0098】
適切なプローブの提示および合成を導く経験的情報内には、実行者を、本発明を使用するように導きうるいくつかの制約があることに留意されたい。なぜなら、最初の立体構造状態における集団と、変換された立体構造状態(複合体における)において主である集団を区別するほんの数kcalの差があるだけだからである。この変換は、ββ-シート複合体を形成しうるプローブ分子とそれの本来の会合要素の間の会合のKdによるか、または分子間の静電気的相互作用における変化による(例えば、溶液のイオン強度を低下させることによる)かのいずれかによる駆動力により与えられる。Alのような金属イオンが含まれる場合、すなわちもう一つのリガンドの結合の場合には、他の静電気的または立体効果が寄与しうる。プローブペプチドのサイズは、変わりうるが、検出条件下で「合理的に」明確な二次構造をもつために、および選択されたプリオンに対して十分な認識的特異性をもつために、十分な長さであるべきである。プローブペプチドはまた、突然変異した系統に一般的に適用できるために、単一部位突然変異に対応するべきであり、これらの変化および異種性は、分子の熱力学的安定性に影響を及ぼすと認識している。さらに、プローブは、患者集団に対して、その集団がヒト患者集団であろうと、家畜集団であろうと、または他の哺乳動物集団であろうと、非感染性でなければならない。
【0099】
いったん、ペプチド配列がプローブ(上記のようなβ-シート形成の原因である標的タンパク質の少なくとも一部に対応する)として確立されたならば、ペプチド配列は、ペプチドプローブの分析を容易にすることができる部分または化学的実体で末端キャッピング(endcap)されうる(ペプチドの一方であるが、好ましくは両方の末端に)。好ましくは、この部分は、ピレンのようなフルオロファオであるが、分析のために用いられる分析技術に依存して、広く変わりうる。部分または化学的実体は、ペプチドのアミノもしくはカルボキシ末端において、または、の近くで、複合体化されうる、または共有結合性に結合されうるが、好ましくは、短い疎水性ペプチド配列で末端キャッピングされている。本発明の好ましい局面において、プローブペプチドのアミノおよびカルボキシ末端の両方は、サイズが約1アミノ酸から約5アミノ酸までの範囲である小さな疎水性ペプチドで末端キャッピングされている。これらは、天然または合成でありうるが、好ましくは天然である(すなわち、標的タンパク質のβ-シート形成領域由来である)。フルオロファオは、好ましくは、プローブのアミノおよび/もしくはカルボキシ末端(好ましくは両方)において、または、の近くに、付着しており、例えば、多数ある中でも、ピレン、トリプトファン、フルオレセイン、ローダミンでありうり、好ましくは、ピレンである。フルオロファオは、正しい幾何学的配向にある場合、エキシマーを形成することが好ましい。
【0100】
本発明による立体構造的プローブは、好ましくは、天然でパリンドロームである。これは、β-シート形成の原因である標的タンパク質の一部に対応する第一および第二ペプチド配列を含むように与えられた立体構造的プローブ配列の組織化を指すが、ペプチド配列は、パリンドロームの様式で、すなわち、第一ペプチド配列におけるカルボキシ末端からアミノ末端まで(またはアミノ末端からカルボキシ末端へ)、および第二ペプチド配列におけるアミノ末端からカルボキシ末端まで(またはカルボキシ末端からアミノ末端へ)、提示されている。パリンドロームの立体構造的プローブにおける第一および第二ペプチド配列は、長さが同一である必要はないが、これは、特定の態様において好ましくありうるが、少なくともおおよそで等価であるべきである(2つのペプチド配列{プローブの「アーム」}は、長さが多くて15個、好ましくは多くて10個、およびよりいっそう好ましくは多くて5個のアミノ酸の差であるべきである)。好ましくは、パリンドロームのプローブ配列内の第一および第二ペプチド配列は、1個と5個の間のアミノ酸、好ましくは1個と3個の間のアミノ酸、を含み、好ましくは、少なくとも1個のプロリンアミノ酸を含み、およびより好ましくは、主としてプロリンアミノ酸を含む、リンカーにより分離されている。図10は、本発明に有用である、例示的なパリンドロームの33-mer立体構造的プローブを示している。
【0101】
好ましくは、本発明による立体構造的プローブは、好ましくは、標的タンパク質の関連したペプチド配列由来であり、かつ長さが、1個のアミノ酸から20個以上のアミノ酸まで、好ましくは長さが約2〜10個のアミノ酸と、変わりうり、立体構造的プローブの2つの末端の1つにおいて、またはの近くに、現れる、疎水性アミノ酸配列を含む。パリンドロームの立体構造プローブの場合、これらの疎水性アミノ酸配列は、プローブの2つのペプチドアームの末端に現れる。任意で、プローブはまた、プローブの少なくとも1つの末端に、およびパリンドロームのプローブの場合、プローブの各末端においてまたはの近くに、合成疎水性アミノ酸配列(すなわち、β-シート形成の原因である標的タンパク質のペプチド配列に対して天然ではない)を含みうるが、長さがわずか1個のアミノ酸から20個以上のアミノ酸まで、好ましくは長さが約3〜10個のアミノ酸と変わりうる。
【0102】
例として、かつ非限定的に、標的タンパク質における所望のペプチド配列が、アミノ末端からカルボキシ末端へ読む、配列
(AAAVは、疎水性アミノ酸配列である)を含む場合には、パリンドロームは、
である第一ペプチド配列、および
(またはその配列に近い変異)である第二ペプチド配列を含み、2つの配列が1個から5個までのアミノ酸を含むリンカーにより分離されており、それらのアミノ酸の少なくとも1個、および好ましくは、それらのアミノ酸の、全部ではないが、大部分が、プロリンアミノ酸である。プローブは、それゆえに、以下である:
(仮定的パリンドロームのプローブ)
【0103】
好ましくは、パリンドロームのプローブは、標的タンパク質の関連した配列から得られる疎水性アミノ酸配列を含む。本発明による立体構造的プローブは、容易に得られうる。
【0104】
以下のルールは、本発明による適切な好ましい立体構造的プローブの形成を導くために用いられうる。これらのルールは、一般的に、非限定的に、本発明による立体構造的プローブに適用するが、より具体的には、本発明による好ましいパリンドロームの立体構造的プローブを作製する状況において用いられる。
【0105】
以下のルールは、好ましい立体構造的ペプチドプローブを作製するために本発明に適用されうる:
1. ペプチドパリンドロームの各「アーム」は、最小限5個、および好ましくは、少なくとも10〜12個のアミノ酸、および理想的には、約25個以下のアミノ酸、を有するべきである。
2. アミノ酸配列は、α-ヘリックスまたはランダムコイルからβ-シートへの立体構造転移を起こすことが知られているより大きいタンパク質の領域から選択される。
3. 以下の追加の基準の1つまたは複数:
a)疎水性アミノ酸の高い割合 − 一般的に約75%以上(アミノ酸の数に基づいて)、理想的には80%以上
b)少なくとも20個および好ましくは25個のアミノ酸繰り返し(ハンチンチンに存在しいてるような)
c)異符号の群がった荷電(Zhang, S., Altman, M. and Rich, A. Conformational Disease, A Compendium, Solomon, Taraboulos and Katchalski-Katzir, eds. The Center for the Study of Emerging Diseases, 2001に記載されているような)
d)1個以上、好ましくは5個未満、のアミノ酸を有する、かつ1個以上のプロリン残基を含む、各ペプチドアーム間のリンカー配列
【0106】
ペプチドプローブについての試験基準:
1. パリンドロームのペプチドプローブの立体構造は、β-シートではなくて、α-ヘリックスまたはランダムコイルのそれであるべきである。
2. ペプチドの立体構造の決定は、理想的には、溶液立体構造を同定できる円偏光二色性測定により達成される。これらは、水性緩衝液および/またはトリフルオロエタノールのような有機剤を含みうる1つまたは複数の溶媒においてCD分光計を用いて行われる − 図11参照。
【0107】
上記で得られた一般的ルールを適用し、かつ当技術分野において容易に利用できる方法を用いて、当業者は、本発明において有用でありうる好ましい特性をもつ多数の立体構造的ペプチドプローブを作製することができる。
【0108】
「円偏光二色性」(「CD」)は、光学活性物質が、CD分光偏光計により測定される場合、わずかに異なって、LおよびR側の円偏光を吸収する時、観察される。差は、非常に小さく、楕円率における度の分率を表す。図11は、タンパク質およびペプチドがとることができる3つの異なる一般的な立体構造型を代表する連合のCD曲線を描く。ペプチドおよびタンパク質に存在する二次構造の別個の型についてのCDスペクトルは異なる。
【0109】
複合体化対非複合体化タンパク質のCD曲線を測定および比較することは、本発明を実施する正確な測定手段を代表する。
【0110】
意外にも、本発明者らは、ほぼ生理的条件下で、2つのペプチド-14-mer(SEQ ID NO:3)および19-mer(SEQ ID NO:2)を共有結合性に連結するパリンドローム、33-mer(SEQ ID NO:1または29)、は図12に示されているように、14-mer構造に似ている、2つの疎水性鎖の近接にもかかわらず、大部分はコイル立体構造を示すことを測定した。パリンドロームの33-merのペプチドの各末端におけるピレンの付加は、図13に示されているように、立体構造変化のスペクトル観察を可能にする。単量体(開鎖)立体構造における33-merの末端に付着したピレンについてのスペクトルスキャンは、370 nmと385 nmの間に最大発光をもつ、著しく異なる蛍光スペクトルを与えるが、ピレン標識ペプチドの励起二量体またはエキシマー状態は、475 nmと510 nmの間に発光最大をもつ。
【0111】
上記のいくつかの光学的方法のいずれかにより立体構造変化を追跡することは可能であるが、本発明の好ましい態様は、蛍光分光法を利用し、なぜなら、その技術が感度、迅速性および操作の簡単さを提供するからである。プローブは、特定の光学的性質をもつフルオロファオの両方の末端における付着により修飾される。これらは、特定の波長の光(発色団自身の吸収および発光スペクトルにより規定される)での照射により蛍光を発する能力を含むことが好ましい。従って、吸収最大の波長の近くの波長の光での照射、および励起波長から区別されるために十分により高い波長における光の放射 − この測定は、当業者に周知である。そのようなフルオロファオの例は、限定されるわけではないが、ピレン、トリプトファン、フルオレセイン、ローダミンを含む。付着したフルオロファオが、正しい幾何学的配向にある場合、エキシマーを形成する能力をもつこともまた、好ましい。
【0112】
「エキシマー」とは、必ずしも共有結合性とは限らず、かつ光子により励起されている分子実体と同一の非励起分子実体の間に形成される、付加生成物である。付加生成物は、天然では一過性であり、それが光子の放射により蛍光を発するまで存在する。通常の発光スペクトルの波長より長い波長における新しい蛍光バンドの発生によりエキシマー(またはエキシマーの形成)を認識することが可能である。エキシマーは、励起スペクトルが単量体のそれと同一であるため、蛍光共鳴エネルギー移転から識別されうる。
【0113】
エキシマーの形成は、フルオロファオの幾何学的アラインメントに依存しており、それらの間の距離により激しく影響を及ぼされる。好ましい態様において、フルオロファオは、各プローブ末端に存在し、フルオロファオ間のエキシマー形成は、全体的なプローブ立体構造がα-ヘリックスまたはランダムコイルである限り、無視できる。これは、測定されるべき標的タンパク質の非存在下における分析に用いられうる溶媒中のプローブの蛍光性挙動の測定により容易に測定される。
【0114】
分析物標的との相互作用後の好ましい立体構造転移は、エキシマー形成が分析されうる条件下で蛍光スペクトルを測定することにより達成される。典型的には、例示的なフルオロファオとしてピレンを用いて、励起波長は約350 nmであり、観察波長は、365〜600 nmである。励起後の単量体ピレンの通常の発光(単純蛍光)は、約370〜385 nmの間に最大波長として記録される。代表的データは図14に示されている。
【0115】
図14に示されているように、エキシマーまたは励起二量体状態は、475〜510 nmの間の最大で記録される。励起二量体状態の形成はまた、高塩の添加を通して、およびペプチドのpIにほぼ等しいpH(例えば、図示されている場合、約10のpH)で測定を行うことにより、促進されうる。
【0116】
それゆえに、本発明の好ましい方法において、分析されるべき特定のタンパク質とプローブの相互作用は、エキシマー形成が生じるようにプローブにおいて立体構造変化を引き起こす。これは、本明細書に記載された手順により容易に測定される。分析物の非存在下において示されるもの(α-ヘリックスまたはランダムコイル)からβ-シート構造へのプローブ構造の変換は、プローブに付着したフルオロファオが、容易に同定されうるエキシマーを形成するのを可能にする。さらに、エキシマー形成の大きさは、存在するタンパク質分析物の量に直接関係している。
【0117】
タンパク質またはプリオンは、凝集型において、または脂質、他のタンパク質または糖のような他の細胞成分の存在下において、検出されうる。分析のための試料調製は、好ましくは、ホモジナイズされる、または組織もしくは凝集体構造の類似した破壊にかけられ、細胞片は、好ましくは、遠心分離により除去される。この過程は、理想的には、緩衝塩溶液の存在下において行われ、SDS、トリトンX-100またはサルコシルのようないくつかの界面活性剤の1つを利用しうる。さらに、試料の濃度は、いくつかの薬剤のいずれかでの処理により達成されうる;一つの好ましい薬剤は、リンタングステン酸塩であり、それは、Safar et al. Nature Medicine 4:1157-1165 (1998)の方法に従って用いられる。
【0118】
本発明の好ましい態様において、ペプチドプローブは、未知のまたは検査試料への添加のために選択される。ペプチドプローブは、好ましくは、主にα-ヘリックスもしくはランダムコイルの二次構造をもつが、好ましくは、必ずしもではないが、β-シート形成の原因である標的タンパク質の部分由来である、タンパク質またはペプチド配列である。特に好ましい態様において、ペプチドプローブは、ポリリジンに見出されるヘリックス-ループ-ヘリックス構造からなるペプチド断片である。もう一つの特に好ましい態様において、ペプチドプローブは、野生型(wt)TSEから、所望の種特異的TSEペプチド配列から、または、不安定かつ非感染性にするような様式で突然変異されている選択的突然変異型TSE配列からまでも、選択されたペプチド配列で作製されうる。さらに、ピレンのような外因性蛍光体が、一般の蛍光検出技術を用いて、予想される立体構造変化の検出を可能にするようにペプチドプローブへ付加または設計されうる。
【0119】
いったん、ペプチドプローブが選択されたならば、それは検査試料へ添加される。しかしながら、ペプチドプローブの添加の前に、超音波処理のような当技術分野において一般的に知られた脱凝集技術に試料をかけることが好ましい。脱凝集段階は、これらの脱凝集された試料物質が新しく導入されるペプチドプローブと自由に結合できて、それにより予想される触媒的伝播を促進するように、任意の可能性のある凝集した試料物質をバラバラになるのを可能にする。
【0120】
検査試料または脱凝集された検査試料をペプチドプローブと相互作用するようにさせておいた後に、その結果生じた混合物は、その後、凝集体の検出のための当技術分野において一般的に知られた分析方法に、および蛍光ペプチドプローブが用いられている場合において蛍光測定に、かけられる。異常に折り畳まれたまたは疾患原因性タンパク質の特徴であるいくらか優占したβ-シート形成を含む未知の、または検査試料は、結果として、β-シートにおける増加、および従って、検査試料およびペプチドプローブの両方を含む最終混合物において凝集体形成を生じる。逆に、大部分のβ-シート二次構造を欠く未知のまたは検査試料は、β-シート構造への転移を触媒することも、凝集体の形成を伝播することもない。
【0121】
最初の立体構造変化は、いくつかの方法において、検査試料で引き起こされる。いずれの理論にも縛られることを意図しないが、金属リガンドの結合は、タンパク質立体構造における変化を方向づけ、凝集に有利でありうる。異なるペプチド配列の発現または切断は、原繊維およびプラーク形成へ導く進行型凝集を促進することができる。遺伝的点突然変異もまた、2つの別個の立体構造の必要とされる相対的エネルギーレベルを変化させることができ、結果として、構造転移における中間点シフトを生じる。さらになお、濃度レベルにおける増加は、立体構造転移に有利であるのに十分でありうる。しかしながら、最初のトリガー機構を問わず、プリオン関連疾患においてのような多数の異常なタンパク質立体構造における疾患過程は、異常な立体構造の触媒的伝播を含み、結果として、以前に正常なタンパク質の構造変換を生じる。
【0122】
本発明に有用な光学的検出技術は、限定されるわけではないが、1-アニリノ-8-ナフタレンスルホナート(ANS)もしくはコンゴレッド染料のような外因性蛍光体を用いる光散乱または疎水性検出、単量体の立体構造変化かまたはα-βヘテロ二量体における界面における結合のいずれかを通しての蛍光共鳴エネルギー移転(FRET)および内因性トリプトファン蛍光の消光を含む。
【0123】
他の構造技術は、平衡超遠心分離またはサイズ排除クロマトグラフィーを含む。
【0124】
本発明は、異常タンパク質またはプリオンのレベルを感染性のレベルと直接的に相関させるために伝播された立体構造変化を用いる。このため、伝播の結果としての感染性生成物における増加がないような様式で本発明の方法を利用することが好ましい。これは、異常型の感染、伝染および伝播の鎖の間の連結に「裂け目」を置くことにより達成されうる。そのような「裂け目」は、凝集体の二量体型と多量体型の間の過渡期に生じなければならない。多量体型の物理的形成は、それの形成へ導く段階を単純に妨げることによりブロックされうる。これは、リンカーまたは「つなぎ鎖」におけるプローブは、お互いに遭遇する可能性がより高く、従って、結果としてシグナルを増幅することを生じるという理解の下で、対象となる配列が、非関連性ペプチドへ、または天然の「ブロッカー」セグメントにより付着している、プローブを用いることにより達成されうる。
【0125】
本発明は、以下の実施例においてさらに記載されているが、それは例証となるものであって、決して限定するものではない。
【0126】
実施例1
材料および方法
試料は、以下のように、本発明の使用による検査および診断のために得られうる。試料は、ガラスホモジナイザーにおけるホモジナイゼーションにより、または液体窒素の存在下におけるすり鉢とすりこぎにより、組織(例えば、挽肉の一部、または生検手順により得られた組織の量)から調製されうる。材料の量は、約1 mgと1 gmの間、好ましくは10 mgと250 mgの間、理想的には20 mgと100 mgの間であるべきである。試料採取されうる材料は、適した溶媒、好ましくは、7.0と7.8の間のpHにおけるリン酸緩衝食塩水、に懸濁されうる。リボヌクレアーゼ阻害剤の添加が好ましい。溶媒は、界面活性剤(例えば、トリトンX-100、SDS、またはサルコシル)を含みうる。ホモジナイゼーションは、ホモジナイザーのいくつかのエクスカーション、好ましくは10ストロークと25ストロークの間;理想的には15ストロークと20ストロークの間、について行われる。懸濁された試料は、好ましくは、100 gと1,000 gの間で5〜10分間、遠心分離され、上清材料は分析のために試料採取される。いくつかの試料において、Safar et al., Nature Medicine 4, 1157-1165 (1998)により記載された手順に従って、およびWadsworth, The Lancet, 358, 171-180 (2001)により改変されているように、上清材料をリンタングステン酸のような追加の試薬で処理することが好ましい場合がある。8個のプリオン系統は、異なる立体構造をもつPrPSc分子を有する。Safar, et al.およびWadsworth、前記を参照。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病におけるプロテアーゼ抵抗性プリオンタンパク質の組織分布は、Wadsworth, et al. 前記に記載されているように、感度が高い免疫ブロッティングアッセイを用いて報告されている。
【0127】
検査されるべき試料の量は、Bradford, Anal. Biochem. 72:248-254 (1976)により記載された手順により測定されるような上清溶液のタンパク質含有量の測定に基づいている。タンパク質のマイクログラム量を測定するための迅速かつ感度の高い方法は、タンパク質-色素結合の原理を利用する。好ましくは、これは、タンパク質の約0.5 mgと2 mgの間に相当する。
【0128】
組織材料について上記の手順に加えて、検査試料は、血清、動物起源の産物を含みうる薬学的製剤、髄液、唾液、尿または他の体液から得られうる。液体試料は、直接的に検査されうる、または上記のようなリンタングステン酸のような薬剤での処理にかけられうる。
【0129】
例証的分析
TSEを含む試料は、以下のように本発明に従って分析されうる。図2を参照して、概略図の上端行は、β-シートを含むと表明されているTSEタンパク質の未知試料12を示す。β-シートは、超音波処理により脱凝集される。標識ペプチドプローブ14を添加し、試料12に結合するようにさせておく。試料12におけるβ-シート立体構造は、ペプチドプローブをβ-シート立体構造16に従わせるように誘導する。ペプチドプローブ14の間でのβ-シート伝播は、凝集体18を形成する。結果生じた、大部分のβ-シート型への転移および増幅された凝集体形成は、光散乱および円偏光二色性(CD)のような技術により検出される。特に好ましい態様において、ペプチドプローブは、蛍光標識され、蛍光検出が用いられる。
【0130】
図2の下端行は、TSEタンパク質の未知試料がそれの正常なα-ヘリックス型10であると表明されている代わりの例を示す。一貫性のために、試料は、上記の同じ脱凝集過程にかけられる。標識ペプチドプローブ14の追加において、β-シート型への転移も未知試料への結合も生じない。結果として、標識ペプチドプローブの場合、集まった蛍光シグナルはなく、他の分析ツールによる凝集体形成の検出はない。この概略図に基づいて、未知試料は、そのような異常タンパク質立体構造または配列の存在または非存在について検査されうる。
【0131】
実施例2
ポリリジンがモデルペプチドとして用いられた。実験は、大部分α-ヘリックス型からβ-リッチ型への転移に関与している立体構造変化を例証するためにモデル系を用いて行われた。選択されたモデル系は、非神経毒性ポリアミノ酸ポリリジンを用いた。ポリアミノ酸は、入手可能性および安全性のために選択された;かつ、正常には、5と9の間のpH値においてランダムコイル立体構造を証明する。
【0132】
図3は、ポリ-L-リジン 20マイクロモル(μM)52,000分子量(MW)がペプチドモデルとして用いられた実験のCDグラフを描く。
【0133】
図3にも示されているように:
【0134】
試料24は、pH 7、25℃に維持されたが、約205ナノメートル(nm)での最小を示し、ランダムコイル構造を示唆した;pH 11(等電点近く)、50℃で維持された試料26は、結果として、β-シート構造(タンパク質立体構造の例示的なCDスペクトルについて図11参照)を示唆する約216ナノメートル(nm)での最小を生じた;試料28は、pH 7、25℃でおよびpH 11、50℃で維持された試料の1:1組み合わせであったが、結果として、β-シート構造を示唆する約216ナノメートル(nm)での最小を生じた;
【0135】
試料30は、pH 7、50℃でおよびpH 11、50℃で維持された試料の1:1組み合わせであったが、結果として、β-シート構造を示唆する約216ナノメートル(nm)での最小を生じた。
【0136】
実施例3
図4は、以下で行われた実験の一般的なCD結果を示す:
(1)ポリ-L-リジンを用いて;および
(2)様々な環境条件下においてランダムコイルからβ-シートへの立体構造変化の効果を観察するために、様々な温度およびpHにおいて。結果は、温度およびpHの両方は、転移において重要な役割を果たしていることを示している。結果はまた、β-シートペプチドの相対的少量のランダムコイル試料への添加が、結果として、β-リッチ立体構造へのシフトを生じうること、ならびにそのような変化が、試料の温度およびpH環境に依存して促進されうることを示している。
【0137】
より具体的には、図4は、実施例1〜3に記載された実験技術に従ってペプチドプローブとして70マイクロモル(μM)で52,000分子量(MW)のポリ-L-リジンを用いて作成された吸光度グラフを示す。図4は以下のことを示している:
【0138】
試料32(pH 11、25℃)は、大部分α-ヘリックス構造を示す、約0.12でプラトーを証明した;
【0139】
試料34(pH 7、50℃で維持された)は、大部分ランダムコイル構造を示す、約0.22でプラトーを証明した;
【0140】
試料36(pH 7、50℃でおよびpH 11、50℃で維持された試料の10:1組み合わせ)は、結果として、ランダムコイルからβ-シート構造への促進された転移を示す、約0.22から0.33への急勾配を生じた;
【0141】
試料38(pH 7、25℃でおよびpH 11、50℃で維持された試料の10:1組み合わせ)は、結果として、ランダムコイルからβ-シート構造への転移を示す、約0.22から0.26への緩やかな勾配を生じた。
【0142】
上記のすべての実験に基づいた観察は、相対的少量のβ-シートペプチドのランダムコイル試料への添加が、結果として、β-リッチ立体構造へのシフトを生じうること、ならびにそのような変化が、試料の温度およびpH環境に依存して促進されうることを示している。
【0143】
実施例4
図15に示された結果へと導いた実験は、33-merの標的ペプチド(SEQ ID NO:1および29):
のみの使用、およびエキシマー形成の観察を通してペプチド会合を探索することを含んだ。用いられた33-merの標的ペプチド(SEQ ID NO:1または29)は、図10Bに示されているように、位置_M11V_、M14L_、_M20L_、およびM23V_におけるバリンおよびロイシンの代わりのメチオニンの置換の点で対応するヒト配列とは異なるマウスアミノ酸配列であった。CD(ペプチドは標識されていない)および分光蛍光分析研究(ピレン標識ペプチドを用いる)を用いて観察した結果を比較した。ホモジネートは用いられなかった。図15に示された結果へと導く実験は、何が、33-merの標的ペプチド(SEQ ID NO:1または29)を大部分単量体から二量体(エキシマー)への立体構造的に変化して、凝集するように誘発するのかを理解するために企てられた詳細な研究であった。μM範囲での33-merの標識ペプチド会合を促進する条件が、見出された。
【0144】
33-merの標的ペプチドの静電気的相互作用をスクリーニングし、それにより、それの溶解度を最小限にした条件(pI=10)が、極めて低い濃度(10μM)下でペプチドの自己会合を引き起こした。この自己会合は、二量体またはエキシマーの形成、およびペプチドの末端上のピレンフルオロファオによる同時に生じる蛍光の近赤外シフトにおいて明らかである。例として、図15の曲線1は、優勢なペプチド配座異性体が単量体であるpH 6〜8、KCl(100〜500μM)の条件を代表する;一方、図15の曲線2は、ペプチドの非常に低い濃度においてのpH 10〜11、KCl(100〜500μM)の条件を代表し、強いエキシマー形成(単量体の凝集)を観察した。
【0145】
実施例5
図16に示された結果へと導いた実験は、様々な個々のペプチド、および33-merのプローブ(19-merおよび14-merを含む)標的ペプチド(SEQ ID NO:1、29、2または3):
の使用を含んだ。アッセイ条件は、CDによりモニターされる立体構造への効果を観察するために変化させられた。目標は、何の熱力学的条件が、単量体ランダムコイルから凝集されたβ-シートへの1段階転移を生じるのかを決定し、かつおそらくペプチドのミセル形成である会合性「X」状態を避けることであった。
【0146】
図16に示された結果へと導いた実験において、溶媒条件の範囲に渡って、およびペプチド濃度(ペプチド濃度は、対数目盛で提示され、CDについての標準的図 − 図11も参照する)の範囲に渡って、詳細な立体構造情報を得るように、CDによりペプチド会合をモニターするために、特定のλ(205 nm)波長が用いられた。
【0147】
標的ペプチドについて回収された会合曲線(θ205)は、50μMおよび3 mM範囲において、それぞれ、2つの立体構造転移を示し、コイルから「X」状態へと経て、そしてβ-シートへ動いた。
【0148】
図16を参照して、50%より上の溶媒条件について(左端の点線)、33-merの標的ペプチド(SEQ ID NO:1および29)
は3μMにおいてコイル状態からβ-シート状態へ転移したが、一方、構成要素19-merまたは14-merは、転移することはできたが、ほとんど10倍高いペプチド濃度においてであった(中心線)。水性条件下で(太い線)、ペプチドのいずれも、β-シート構造へ自己会合することができなかった。
【0149】
33-merのパリンドロームペプチドの標的ペプチド(SEQ ID NO:1および29)は、それが「行き止まり」会合状態(水性条件下でプラトーに達する効果により示されるような)を避ける点において、50%溶媒(アセトニトリルまたはトリフルオロエタノール)条件下で、非常に低い濃度(すなわち、1μM)において固有の性質を示した。
【0150】
図16は、溶媒および温度における変動が、標的ペプチドの会合性挙動に有意には影響を及ぼさないこと、ならびにすべてのペプチドが同じ曲線をたどり、配列特異性がこの種の分子集合において重要な特徴ではないことを示唆していることを示す。
【0151】
実施例6
図17に示された結果へ導いた実験は、以下のように行われた。
【0152】
スクレーピー感染(293系統)ハムスター脳材料の1グラムが、滅菌リン酸緩衝食塩水において液体窒素中でホモジナイズされた。10倍段階希釈が滅菌PBSへ作製された。脳ホモジネートにおけるプロテアーゼ抵抗性プリオンタンパク質(PrPSc)の濃度は、キャピラリー電気泳動抗体-捕獲により測定された。プロテアーゼ抵抗性プリオンタンパク質(PrPSc)の10 ngと等価である脳ホモジネートは、50%TFE(トリフルオロエタノール)において33-merの標的ペプチドの1.5μMと混合され、二重クロノメーター分光蛍光計における350 nmでの励起の前に室温で1時間、インキュベートされ、350 nmから600 nmまでの発光が記録され、励起および発光スキャンが5時間目および24時間目において繰り返された。33-merのペプチド単独が対照として用いられた。
【0153】
感染性プリオンタンパク質の添加が、33-merの標的ペプチドの蛍光における有意な増加へと導き、50%トリス:50%TFEの条件下でのCDデータによりほぼβ-シート立体構造であることが見出された。この蛍光の増加は、33-mer凝集体の形成を示した。33-mer凝集体は、時間と共に、不可逆性に、不安定になって、解離することが見出された。
【0154】
時間と共に複合体対ペプチドについての蛍光の放射を追跡することにより、2つの異なる波長、377 nm(三角)および475 nm(四角)、においてモニターする場合、複合体が時間と共に解離したが、一方、ペプチド蛍光は安定したままであることが示された。
【0155】
実施例7
図18に示された結果へ導いた実験は、以下のように行われた。
【0156】
スクレーピー感染したおよび健康な、ハムスター脳、ヒツジ脳ならびにエルク脳の1グラムが、滅菌リン酸緩衝食塩水において液体窒素中でホモジナイズされた。10倍段階希釈が滅菌PBSへ作製された。脳ホモジネートにおけるプロテアーゼ抵抗性プリオンタンパク質(PrPSc)の濃度は、キャピラリー電気泳動抗体-捕獲により測定された。脳ホモジネート、感染および健康、は50%TFE(トリフルオロエタノール):50%トリスにおいて33-merの標的ペプチドの0.52μMと混合され、二重クロノメーター分光蛍光計における350 nmでの励起の前に室温で1時間、インキュベートされ、350〜600 nmでの発光が記録された。50%TFE:50%トリスにおける33-merのペプチド単独が追加の対照として用いられた。
【0157】
トリス:TFE(1:1)溶媒中の、感染した脳ホモジネート(グラフ線1-)、健康な脳ホモジネート(グラフ線2-)、およびペプチド単独(グラフ線3-)の存在下における標的ペプチド(520 nM)の蛍光スペクトルは、図18に示されている。データは、ハムスター(パネルA)、ヒツジ(パネルB)、およびエルク(パネルC)由来の0.01%脳ホモジネートについてである。ハムスター(270 pg/ml)、ヒツジ(60 pg/ml)、およびエルク(6 pg/ml)。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】TSE配座異性体のα-ヘリックス単量体10およびβ-シート二量体12を示す。プリオンタンパク質(PrPC)の正常な野生型(wt)は、単量体状態を好み、一方、異常な、疾患原因型(PrPSc)は多量体状態を好む。
【図2】β-シートで構成されるTSEタンパク質を含む試料12の診断分析を示す。
【図3】本発明に従って行われた、およびペプチドモデルとしてポリ-L-リジン20マイクロモル(μM)52,000分子量(MW)を用いた、診断分析の円偏光二色性グラフを示す。
【図4】ペプチドモデルとしてポリ-L-リジン、70マイクロモル(μM)52,000分子量(MW)を用いて行われた診断分析の吸光度グラフを示す。
【図5】ペプチドモデルとしてポリ-L-リジン、70マイクロモル(μM)52,000分子量(MW)を用いた図3からの結果、およびpHおよび温度の立体構造変化への効果を示す。
【図6】立体構造変化を起こしたα-ヘリックス束構造の近位および遠位における蛍光プローブとしてピレンを用いた分光分析を示す。
【図7】タンパク性物質またはプリオンにおける立体構造変化に関連したエネルギー変化を示す。
【図8】PrPのα-ヘリックスおよびループ構造を示す。
【図9】PrPScの大部分のβ-シート二次構造を示す。
【図10】本発明の方法に用いられるパリンドロームの33-merのプローブを示す。
【図11】タンパク質およびペプチドがとりうる3つの別個の一般的な立体構造型の円偏光二色性グラフを示す(供給源:Woody RW (1996) Circular Dichroism and the Conformational Analysis of Biomolecules (Fasman, GD ed.) pp. 25-69, Plenum press NY)。
【図12】本発明に従って水性条件で行われた、ならびにパリンドロームの33-merのプローブ、およびそれを構成する14-merアミノ酸配列および19-merアミノ酸配列(これらの3つの配列は図10に示されている)を用いた、診断分析の円偏光二色性グラフを示す。
【図13】診断分析の分光蛍光分析データが両末端に付着したピレンを有するパリンドロームの33-merのプローブ(SEQ ID NO:1、図10参照)を用いて行われた、図6の分光分析のバリエーションを示す。単量体(開鎖)立体構造におけるスペクトルスキャンは、370 nmと385 nmの間に最大発光をもつ、際立った蛍光スペクトルを生じるが、ピレン標識ペプチドの励起二量体またはエキシマー状態は、475 nmと510 nmの間に発光最大をもつ。
【図14】ピレンがフルオロファオとして用いられた分光分析を示し、励起波長は、約350 nmであり、観察波長は約365〜600 nmである。励起後の単量体ピレンの正常な発光(単純蛍光)は、約370〜385 nmの間で最大波長として記録された。
【図15】様々な条件下において図10に示された配列のパリンドロームの33-merのプローブを用いた診断分析における単量体形成(IM)に対するエキシマー形成(ID)の比率を示す。本発明者らは、タンパク質の最小溶解度を、条件がそれの等電点近くである時に見ることを予想し、それが、条件(2)が33-merのペプチドの等電点にほぼ等しい場合に本発明者らが観察したことである−それは、(1)と比較してこれらの条件下で劇的に低下した溶解度をもつため、それ自身と凝集する。この例において、静電気的相互作用(pI=10)は、ペプチドの等電点で極めて低い濃度(10μM)下で自己会合を引き起こす。以下の凡例は図15に適用する。−1. pH 6〜8、KCl(100〜500 mM)−2. pH 10〜11、KCl(100〜500 mM)
【図16】コイルドからβ-シートへの変換に関連した最適なパラメーターを決定するために様々な条件下における、パリンドロームの33-merのプローブ(SEQ ID NO:1)、19-mer(SEQ ID NO:2)および14-mer(SEQ ID NO:3)(図10参照)を用いた診断分析における立体構造変化についての会合曲線を示す。
【図17】プリオンタンパク質および33-merのプローブの複合体の蛍光が時間の関数として測定された実施例6に記載された実験からの結果を示す。複合体は、時間と共に(1時間〜24時間)、実質的に解離した。
【図18】図18(a)〜(c)は、トリス:TFE(1:1)溶媒中の、感染した脳ホモジネート(1)、健康な脳ホモジネート(2)、およびペプチド単独(3)の存在下における標的ペプチド[520 nM]の蛍光スペクトルを示す。データは、ハムスター(A)、ヒツジ(B)、およびエルク(C)由来の0.01%脳ホモジネート(ハムスター[270 pg/ml]、ヒツジ[60 pg/ml]、およびエルク[6 pg/ml])について得られた。
【図19】本発明に従って行われた蛍光診断分析の予備的検量線を示す。この図に示されたデータは、本発明が、何の最適化もせずに、今日ヨーロッパで使用されている有効な検査より2桁より大きい感度であることを証明する。プリオン感染性:1 IU=3 fM=200,000 PrP プリオンタンパク質濃度は、Schmerr博士のキャピラリー免疫電気泳動法を用いて測定された。Schmerr, et al., J. Chromatogr. A., 853(1-2), 207-214 (August 20, 1999)を参照。本発明での診断法の感度は、緑色バーの左側に現れるが、より通常の診断法の感度は、緑色バーの右側に現れる。データは図18から取られている。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、試料において立体構造的に変化したタンパク質およびプリオンを検出するための方法ならびにキットを提供する。
【0002】
一つの態様において、立体構造的に変化したタンパク質およびプリオンは、アミロイド形成的疾患に関連している。
【背景技術】
【0003】
関連出願
本国際出願は、2001年5月31日に出願された米国仮特許出願第60/295,456号の優先権を主張する、2002年5月30日に出願された米国特許出願第10/161,061号の恩典を主張する、2003年12月4日に出願された米国特許出願第10/728,246号の出願日の恩典を主張し、それらすべての全開示は、頼られ、かつ参照により本明細書に組み入れられている。
【0004】
発明の背景
1. 立体構造的に変化したタンパク質およびプリオンならびに関連疾患
通常可溶性のタンパク質の立体構造的に変化した不溶性タンパク質への変換は、様々な他の疾患における原因過程であると考えられる。構造の立体構造変化は、通常可溶性かつ機能性タンパク質の定義済みの不溶性状態への変換に必要とされる。そのような不溶性タンパク質の例は以下のものを含む:アルツハイマー病(AD)および脳のアミロイドアンギオパチー(CAA)のアミロイドプラークにおけるAβペプチド;パーキンソン病のレヴィー小体におけるα-シヌクレイン沈着物、前頭側頭認知症およびピック病における神経原繊維錯綜におけるタウ;筋萎縮性側索硬化症におけるスーパーオキシドジスムターゼ;ハンチントン病におけるハンチンチン;ならびにクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)におけるプリオン:(概説として、Glenner et al. (1989) J. Neurol. Sci. 94:1-28; Haan et al. (1990) Clin. Neurol. Neurosurg. 92(4):305-310参照)。
【0005】
しばしば、これらの高度に不溶性のタンパク質は、β-プリーツシート立体構造の共通の特徴を示す非枝分かれ型原繊維で構成される凝集体を形成する。CNSにおいて、アミロイドは、脳髄膜血管に(脳血管沈着物)、および脳実質に(プラーク)、存在しうる。ヒトおよび動物モデルにおける神経病理学的研究は、アミロイド沈着物の近位の細胞がそれらの正常な機能を妨害されることを示している(Mandybur (1989) Acta Neuropathol. 78:329-331; Kawai et al. (1993) Brain Res. 623:142-6; Martin et al. (1994) Am. J. Pathol. 145:1348-1381; Kalaria et al. (1995) Neuroreport 6:477-80; Masliah et al. (1996) J. Neurosci. 16:5795-5811)。他の研究はさらに、アミロイド原繊維が実際に、神経変性を惹起しうることを示している(Lendon et al. (1997) J. Am. Med. Assoc. 277:825-31; Yankner (1996) Nat. Med. 2:850-2; Selkoe (1996) J. Biol. Chem. 271:18295-8; Hardy (1997) Trends Neurosci. 20:154-9)。
【0006】
ADおよびCAAの両方において、主要なアミロイド成分は、アミロイドβタンパク質(Aβ)である。Aβペプチドは、2つの推定のセクレターゼの作用によりアミロイドβ前駆体タンパク質(APP)から生じるのだが、正常なCNSおよび血液に低レベルで存在する。2つの主な変異体Aβ1-40およびAβ1-42が、APPの選択的カルボキシ末端切り詰めにより生成される(Selkoe et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7341-7345; Selkoe, (1993) Trends Neurosci 16:403-409)。Aβ1-42は、ADおよびCAAの両方のアミロイド沈着物においてその2つのペプチドの中でより原繊維発生的かつより豊富である。上記のAD症例におけるアミロイド沈着物に加えて、たいていのAD症例はまた、血管壁におけるアミロイド沈着を伴っている(Hardy (1997)、前記; Haan et al. (1990)、前記; Terry et al.、前記; Vinters (1987)、前記; Itoh et al. (1993)、前記; Yamada et al. (1993)、前記; Greenberg et al. (1993)、前記; Levy et al. (1990)、前記)。これらの血管病変は、CAAの特徴であり、ADの非存在下において存在しうる。
【0007】
ヒトトランスチレチン(TTR)は、4つの同一の、主にβ-シート構造をもつ単位で構成される正常な血漿タンパク質であり、ホルモンチロキシンの輸送体として働く。TTRのアミロイド原繊維への異常な自己集合は、2つの型のヒト疾患、すなわち、全身性アミロイドーシス(SSA)および家族性アミロイドポリニューロパシー(FAP)、を引き起こす(Kelly (1996) Curr Opin Struct Biol 6(1):11-7)。FAPにおけるアミロイド形成の原因は、TTR遺伝子における点突然変異である;SSAの原因は知られていない。臨床診断は、生検材料においてインサイチューでアミロイドの沈着物を検出することにより組織学的に確立されている。
【0008】
今日まで、インビボでのTTRのアミロイドへの変換の機構についてほとんど知られていない。しかしながら、いくつかの研究室は、アミロイド変換が、インビトロで、正常なヒトTTRの部分的変性によりシミュレートされうることを実証した[McCutchen, Colon et al. (1993) Biochemistry 32(45):12119-27; McCutchen and Kelly (1993) Biochem Biophys Res Commun 197(2) 415-21]。立体構造転移の機構は、線状のβ-シート構造をもつアミロイド原繊維へ重合する単量体の立体構造的中間体を含む[Lai, Colon et al. (1996) Biochemistry 35(20):6470-82]。過程は、チロキシンまたはトリヨードフェノールのような安定化分子と結合することにより緩和されうる(Miroy, Lai et al. (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93(26):15051-6)。
【0009】
神経炎性プラークが形成される正確な機構、およびプラーク形成の疾患関連神経変性過程との関係は、はっきりしていない。アルツハイマー病およびプリオン病患者の脳におけるアミロイド原繊維は、結果として、ある特定の細胞の炎症性活性化を生じることが知られている。例えば、初代ミクログリア培養物およびTHP-1単球細胞系は、原繊維のβ-アミロイドおよびプリオンペプチドにより刺激され、同一のチロシンキナーゼ依存性炎症性シグナル伝達カスケードを活性化する。β-アミロイドおよびプリオン原繊維により誘発されたシグナル応答は、神経変性の一部原因である、神経毒性産物の生成へと導く。C.K. Combs et al., J Neurosci 19:928-39 (1999)。
【0010】
2. プリオン
プリオンは、ヒトおよび動物において中枢神経系海綿状脳症を引き起こす感染性病原体である。プリオンは、細菌、ウイルスおよびウイロイドとは異なる。可能性のあるプリオン前駆体は、PrP 27-30と呼ばれるタンパク質、感染した脳にプラークとして見出される棒状フィラメントへ重合する(凝集する)28kダルトンの疎水性糖タンパク質、である。正常なタンパク質相同体は、プリオンがプロテアーゼに非常に抵抗性であるのに対して、それは容易に分解可能である点でプリオンと異なる。プリオンは、従来のアッセイ方法Benjamin Lewin, Genes IV(Oxford Univ. Press, New York, 1990 p.1080)により検出できない、極少量の感染性の強い核酸を含みうることが示唆されている。目下の有力な仮説は、プリオンタンパク質の感染性に核酸成分は必要ないということである。
【0011】
完全なプリオンタンパク質をコードする遺伝子は、その後、クローニングされ、シーケンシングされ、トランスジェニック動物において発現された。PrPCは、単一コピーの宿主遺伝子によりコードされ、正常には、ニューロンの外側表面に見出される。翻訳後過程中、PrPScは、正常な細胞性PrPアイソフォーム(PrPC)から形成され、プリオン疾患は、PrPCのPrPScと呼ばれる修飾アイソフォームへの変換に起因する。PrPScは、動物およびヒトの伝染性神経変性疾患の伝染および病原性の両方に必要である。
【0012】
正常なプリオンタンパク質(PrP)は、図8に示されているように、大部分がα-ヘリックスおよびコイルドループ構造である細胞表面金属糖タンパク質であり、通常、中枢神経系およびリンパ系に発現される。抗酸化物として働くと考えられており、細胞恒常性と関連していると考えられる。しかしながら、PrPの異常型は、プロテアーゼに抵抗性である配座異性体であり、図9に示されているように、主に、それの二次構造においてβ-シートである。二次構造におけるこの立体構造変化は、プリオン病過程における凝集および結果として生じる神経毒性プラーク沈着へと導くと考えられている。
【0013】
プリオン関連疾患は、ヒツジおよびヤギのスクレーピー、シカおよびエルクの慢性消耗病、ならびにウシの牛海綿状脳症(BSE)を含む(Wilesmith, J. and Wells, Microbiol. Immunol. 172:21-38 (1991))。ヒトの4つのプリオン病が同定されている:(1)クールー、(2)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、(3)ゲルストマン-シュトラウスセラー-シャインケル疾患(GSS)、および(4)致死性家族性不眠症(FFI)(Gajdusek, D.C., Science 197:943-960 (1977); Medori et al., N. Engl. J Med. 326:444-449 (1992))。
【0014】
プリオン病は、伝染性かつ潜行性である。例えば、プリオン病に関連した長い潜伏時間は、世界中の死体供給HGHで処置された何千人という人々において数十年間、医原性CJDの完全な程度を明らかにしない。生物学的産物においてプリオンを検出することの重要性は、新しい変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(nvCJD)を発症したヒトへとウシプリオンが伝染したという可能性により高まった(G. Chazot et al., Lancet 347:1181 (1996); R.G. Will et al. Lancet 347:921-925 (1996))。
【0015】
プリオンにより引き起こされる疾患は、診断するのがむずかしい:疾患は潜伏性または無症状でありうる(異常なプリオンは検出できるが、症状は検出できない)。そのうえ、プリオン関連タンパク質の正常な相同体は、感染していない生物体の脳に存在し、さらに検出を複雑にしている。Ivan Roitt, et al., Immunology (Mosby-Year Book Europe Limited, 1993), 15.1。
【0016】
プリオン関連感染の存在を検出するために用いられる現行の技術は、脳における著しい形態変化、および症状が明らかになった後のみ一般的に適用される免疫化学的技術に頼っている。現行の検出方法の多くは、死亡した動物由来の脳組織を用いる抗体に基づいたアッセイまたはアフィニティークロマトグラフィーに、場合によっては、血液試料のキャピラリー免疫電気泳動に、頼っている。
【0017】
脳組織に基づいたアッセイは、遅い検出へと導きうり、検査されるべき動物を屠殺する必要がある。プリオニックチェック(Prionic-Check)もまた、ウェスタンブロットを用いる抗体にかけられる、液化された脳組織試料を得るために動物を屠殺することを必要とする。結果は、6〜7時間で得られるが、検査は、脳におけるPrPS蓄積と臨床症状の発生の間の6ヶ月の時間のずれを考慮しない。扁桃生検試料採取ならびに血液および脳脊髄の試料採取が、正確であるとはいえ、外科的介入を必要とし、結果を得るのに何週間もかかりうる。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)、核磁気共鳴NMR、円偏光二色性(CD)、および他の非増幅構造的技術は、大量の試料、および典型的には、試料供給源からかなり遠方に位置している高価な装置を必要とする。
【0018】
アルツハイマー病およびCAAのような前述の疾患に関連した立体構造的に変化したタンパク質についての検出方法はまた、前に述べられたプリオン検出技術と同様に、それらがしばしば、死後組織試料採取を必要とする点において不適当である。
【0019】
従って、立体構造的に変化したタンパク質およびプリオンについての信頼性がありかつ手頃な価格の検出方法に対して必要性が存在している。そのような方法は、迅速な診断を得て、予防的または治療的処置を促進するために、問題になっている被験体の生涯の間に適用できるべきである。
【発明の開示】
【0020】
発明の概要
本発明は、様々な疾患に関連している立体構造的に変化したタンパク質およびプリオンの検出のための信頼性のある、手頃な価格で、安全な方法を提供する。本発明の方法は、迅速な診断を得て、予防的または治療的処置を促進するために適用されうる。注目に値すべきなのは、本発明の方法は、少量の試料を用い、それゆえに、公知の診断技術より侵襲性が少なく、より容易に適用される。さらに、本発明の方法は、生きている被検体からの試料を分析するために用いられうり、死後得られる試料に限定されない;感染性材料が検査中に増殖されないことを保証する方法で利用されうる。
【0021】
本発明は、伝染性海綿状脳症(TSE)のような特定の疾患過程に関連した立体構造的に変化したタンパク質またはプリオンにおける立体構造変化を利用するために触媒的増殖を用いることにより、先行技術の診断技術に関連した問題の多くを克服する。触媒的増殖は、試料における存在する立体構造変化したタンパク質断片またはプリオンの数を増幅するために用いられうり、検出可能な凝集体を以下のように形成させる:
【0022】
立体構造的に変化したタンパク質またはプリオンを含む試料の下に定義されている立体構造的プローブとの相互作用において、プローブは、立体構造変化を起こし、立体構造的に変化したタンパク質(可溶性または不溶性でありうる)またはプリオン、の立体構造、および、との凝集体、の形をとる。ββシート形成を示す、結果として生じた凝集体は、標準的分析技術を用いて容易に検出されうる。結果として、本発明は、小さな試料サイズの迅速かつ費用効率が高い分析を促進し、限定されるわけではないが、脳を含む様々な源からの組織および体液に広く適用できる。
【0023】
本発明は、低密度リポタンパク質受容体、嚢胞性線維症膜制御因子、ハンチンチン、Aβペプチド、プリオン、インスリン関連アミロイド、ヘモグロビン、αシヌクレイン、ロドプシン、クリスタリン、およびp53のような疾患関連の立体構造的に変化したタンパク質の少量の検出を可能にする。好ましい態様において、本発明の方法は、本明細書に別に記載されているパリンドロームのプローブ、例えば、試料においてプリオンを検出するためのPrP(Sc)タンパク質のアミノ酸配列126〜104位および109〜126位を含むパリンドロームの33-merのプローブ、を用いる。好ましい態様において、プローブは、プローブのβ-シート構造への立体構造変換により、光学的に異なって、検出可能である部分に、各末端で結合している。
【0024】
一つの態様において、本発明は、以下の段階を含む、試料において立体構造的に変化したタンパク質またはプリオンを検出するための方法を提供する:(a)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それにより、(i)大部分がββ-シート立体構造への立体構造変換を起こす、および(ii)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つまたは複数のα-ヘリックスまたはランダムコイルの立体構造的プローブと試料を反応させる段階;ならびに(b)検出可能な凝集体のレベルを検出する段階であって、検出可能な凝集体のレベルが、試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンのレベル、および試料の感染性と相関している、段階。
【0025】
本発明はまた、被検体が立体構造的に変化したタンパク質またはプリオンに関連した疾患に罹っているかどうか、または罹りやすいかどうかを診断する方法に加えて、これらの方法を用いるキットを提供する。
【0026】
本発明のキットは、試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それにより、(i)大部分、ββ-シート立体構造への立体構造変換を起こす、および(ii)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つまたは複数のα-ヘリックスまたはランダムコイルの立体構造的プローブを含む。キットはさらに、プローブ末端に結合する、または結合している、かつ大部分のββ-シート立体構造へのプローブの立体構造変換により光学的に検出可能である部分、加えて、キットを用いるための使用説明書、および試料を懸濁するまたは固定させるための溶液、を含む。
【0027】
被検体が立体構造的に変化したタンパク質またはプリオンに関連した疾患に罹っているかどうか、または罹りやすいかどうかを診断する方法は、以下の段階を含む:
(a)被検体から試料を得る段階;
(b)試料における不溶性タンパク質またはプリオンのββ-シート立体構造と相互作用し、それにより、(i)好ましくは、大部分がββ-シート立体構造への立体構造変換を起こす、および(ii)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つまたは複数のα-ヘリックスまたはランダムコイルの立体構造的プローブと試料を反応させる段階;ならびに
(c)検出可能な凝集体のレベルを検出する段階であって
検出可能な凝集体のレベルが、試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンの量、および試料の感染性のレベルと相関しており、被検体がββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンに関連した疾患に罹っているかどうか、または罹りやすいかどうかを示す、段階。
【0028】
本発明のこれらを始めとする局面は、以下の詳細な説明にさらに記載されている。
【0029】
発明の詳細な説明
本明細書に用いられる場合、以下の用語は、以下のそれぞれの意味をもつ。
【0030】
「アミロイド形成的疾患」とは、アミロイドプラークまたはアミロイド沈着物が身体に形成される疾患である。アミロイド形成は、糖尿病、アルツハイマー病(AD)、スクレーピー、ゲルストマン-シュトラウスセラー-シャインケル(GSS)症候群、牛海綿状脳症(BSE)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、慢性消耗病(CWD)、および関連した伝染性海綿状脳症(TSE)のような多数の疾患に見出される。
【0031】
TSEは、CJD、クールー、致死性家族性不眠症およびGSSのようなヒト疾患を含む致死性神経変性疾患である。TSEの動物型は、ヒツジにおけるスクレーピー、シカおよびエルクにおけるCWD、ならびにウシにおける牛海綿状脳症を含む。これらの疾患は、正常なプロテアーゼ感受性宿主コード化プリオンタンパク質(PrP-sen)の異常なプロテイナーゼK抵抗性アイソフォーム(PrP-res)の脳における形成および蓄積を特徴とする。PrP-resは、より高いβ-シート含有量を有するPrP-res分子凝集体へPrP-senを変換する立体構造変化を含む翻訳後過程によりPrP-senから形成される。PrP-resのこれらの巨大分子凝集体の形成は、PrP-resのアミロイド沈着物が脳において形成され、最終的には「海綿状」(穴で満たされている)になる、TSE媒介性脳病理学と密接に関連している。
【0032】
TSE疾患は、普通ではない動因への曝露により、例えば、ニューギニアのForet族における儀式としての食人風習、または牛海綿状脳症(BSE)におけるウシへの動物部分の給餌により、伝染するように思われ、医原性CJDもまた、死体の下垂体由来のヒト成長ホルモンの投与、移植された硬膜、および角膜移植片、加えて、外科医の神経学的処置中の罹患組織への曝露により引き起こされた。
【0033】
未変性プリオンタンパク質(PrP)の存在は、TSEの病原性に必須であることが示されている。細胞タンパク質PrP-senは、ヒトにおいて第20染色体上に位置している遺伝子によりコードされるシアロ糖タンパク質である。PrP遺伝子は、神経系および非神経系組織に発現されており、それのmRNAの最高濃度はニューロンにある。PrP遺伝子の翻訳産物は、ヒトで253個のアミノ酸、ハムスターおよびマウスで254個、ウシで264個のアミノ酸、ならびにヒツジで256個のアミノ酸からなる(これらの配列のすべては、種特異的PrPを発現させるトランスジェニックマウスを作製する方法を記載する、米国特許第5,565,186号に開示されている)。プリオンタンパク質関連脳症において、細胞PrP-senは、PrP-resが凝集する点においてPrP-senと区別できる(Caughey and Chesebro, 1997, Trends Cell Biol. 7, 56-62);PrP-senが完全に分解される条件下においてプロテイナーゼK消化によりおよそN末端67個のアミノ酸のみが除去される点でプロテイナーゼK抵抗性である(Prusiner et al., 1996, Sem. Virol. 7, 159-173);ならびに、PrP-senについてのα-ヘリカル立体構造の量が低下しており、かつPrP-resについてのβ-シート立体構造の量が増加している(Pan et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 10962-10966)、タンパク質立体構造における変化をもつ、変化したPrP-resへ変換される。
【0034】
PrP-senが、スクレーピー感染した神経移植片の動物レシピエントの脳組織に発現されていない場合には、移植片の外側に病態は起こらず、PrP-resおよびPrP-senの両方が病態に必要とされることを実証している(Brander et al., Nature 379:339-343, 1996)。感染と疾患の出現の間の長い潜伏期間(種に依存して何ヶ月〜何十年)は、PrP-resがPrP-senのPrP-resへの変換を誘発する無細胞インビトロ試験の開発を促した(Kocisko et al., Nature 370:471-474, 1994)。Prusiner et al., 1997年5月9日に公開されたWO 97/16728も参照されたい。これらのインビボおよびインビトロ観察は、PrP-resとPrP-senの間の直接的相互作用がPrP-resを形成し、かつTSE病原性を促進することを示している。
【0035】
特定のPrP配列を含む小さな合成ペプチドは、自発的に凝集して、TSE罹患脳の不溶性沈着物に見られる型の高程度のβ-シート二次構造をもつ原繊維を形成することが以前に示された(Gasset et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 10940-10944; Come et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 5959-5963; Forloni et al., 1993, Nature 362, 543-546; Hope et al., 1996, Neurodegeneration 5, 1-11)。さらに、他の合成PrPペプチドは、PrP-sen分子と相互作用して、増加したプロテアーゼ抵抗性をもつ凝集された複合体を形成することが示された(Kaneko et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92, 11160-11164, 1995; Kaneko et al., J. Mol. Biol. 270, 574-586, 1997)。
【0036】
「立体構造的に変化したタンパク質」は、疾患に関連した3次元立体構造をもつ任意のタンパク質を含む。立体構造的に変化したタンパク質は、疾患を引き起こしうる、疾患の症状における因子でありうる、または他の因子の結果として、試料にもしくはインビボで現れうる。立体構造的に変化したタンパク質は、同じアミノ酸配列をもつもう一つの立体構造に現れる。これらの立体構造的に変化したタンパク質は、一般的に、本発明において分析されるββ-シート形成を示す不溶性タンパク質の形をとっている。
【0037】
以下は、後に挿入句的に、少なくとも1つの立体構造が立体構造的に変化したタンパク質の例である、集合して2つ以上の異なる立体構造を構築する関連不溶性タンパク質が続く、疾患の非限定的リストである:アルツハイマー病(APP、Aβペプチド、α1-抗キモトリプシン、タウ、非Aβ成分、プレセニリン1、プレセニリン2アポE);プリオン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、スクレーピーおよび牛海綿状脳症(PrPSc);ALS(SODおよび神経フィラメント);ピック病(ピック小体);パーキンソン病(レヴィー小体におけるα-シヌクレイン);前頭側頭認知症(原繊維におけるタウ);糖尿病II型(アミリン);多発性骨髄腫-プラズマ細胞疾患(IgGL鎖);家族性アミロイドポリニューロパシー(トランスチレチン);甲状腺髄様癌(プロカルシトニン);慢性腎不全(β2-ミクログロブリン);鬱血性心不全(心房性ナトリウム利尿因子);老人性心臓全身性アミロイドーシス(トランスチレチン);慢性炎症(血清アミロイドA);アテローム性動脈硬化症(アポA1);家族性アミロイドーシス(ゲルゾリン);ハンチントン病(ハンチンチン)。
【0038】
「不溶性タンパク質」は、アミロイド形成的疾患に関連した任意のタンパク質を含み、限定されるわけではないが、前の段落に同定されたタンパク質のいずれかを含む。不溶性タンパク質は、一般的に、凝集体においてββ-シート形成を示す。
【0039】
「PrPタンパク質」、「PrP」などは、本明細書で交換可能に用いられ、ヒトおよび動物において疾患を引き起こすことが知られている感染性粒子型PrPSc、ならびに適切な条件下において感染性PrPSc型へ変換される非感染性型PrPCの両方を意味する。
【0040】
用語「プリオン」、「プリオンタンパク質」、「PrPScタンパク質」などは、本明細書で交換可能に用いられ、PrPタンパク質の感染性PrPSc型を指す。「プリオン」は、語「タンパク質」および「感染」の短縮形である。粒子は、独占的ではないにしても、主として、PrP遺伝子によりコードされるPrPSc分子から構成される。プリオンは、細菌、ウイルスおよびウイロイドとは異なる。公知のプリオンは動物を感染させ、スクレーピー、ヒツジおよびヤギの伝染性の神経系の変性疾患、加えて、牛海綿状脳症(BSE)、すなわち「狂牛病」、およびネコの猫海綿状脳症を引き起こす。ヒトを冒すことが知られている4つのプリオン病は、(1)クールー、(2)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、(3)ゲルストマン-シュトラウスセラー-シャインケル疾患(GSS)、および(4)致死性家族性不眠症(FFI)である。本明細書に用いられる場合、「プリオン」は、用いられる任意の動物において -- 特に、ヒトおよび飼い慣らされた家畜において、これらを始めとする疾患の全部またはいずれかを引き起こすプリオンのすべての型を含む。
【0041】
用語「PrP遺伝子」は、公知の多型および病原性突然変異を含むタンパク質を発現させる遺伝物質を記載するために本明細書に用いられる。用語「PrP遺伝子」は、一般的に、プリオンタンパク質の任意の型をコードする任意の種の任意の遺伝子を指す。PrP遺伝子は、任意の動物由来でありうり、そのすべての多型および突然変異を含み、その用語が、いつかは発見されうる他のそのようなPrP遺伝子を含むことは認識されている。そのような遺伝子により発現されるタンパク質は、PrPC(非疾患)かまたはPrPSc(疾患)型のいずれかを想定できる。
【0042】
「ペプチド模倣体」は、別の生物活性ペプチド分子の活性を模倣する生体分子である。
【0043】
「タンパク質」は、ペプチド結合を介して連結されている2個以上の個々のアミノ酸(天然に存在するかどうかを問わず)の任意の重合体を指し、1個のアミノ酸(またはアミノ酸残基)のα-炭素に結合したカルボン酸基のカルボキシル炭素原子が、隣接したアミノ酸のα-炭素に結合したアミノ基のアミノ窒素原子へ共有結合性に結合する場合、生じる。これらのペプチド結合連鎖、およびそれらを含む原子(すなわち、α-炭素原子、カルボキシ炭素原子(およびそれらの置換基酸素原子)、ならびにアミノ窒素原子(およびそれらの置換基水素原子))は、タンパク質の「ポリペプチドバックボーン」を形成する。最も単純な用語において、ポリペプチドバックボーンは、タンパク質のアミノ窒素原子、α-炭素原子、およびカルボキシル炭素原子を指すように理解されるだろうが、これらの原子(それらの置換基原子の有無を問わず)の2個以上はまた、偽原子として表されうる。実際、本明細書に記載されているような機能部位記述子に用いられうるポリペプチドバックボーンの任意の表示は、用語「ポリペプチドバックボーン」の意味の範囲内に含まれると理解されるものと思われる。
【0044】
用語「タンパク質」は、それの意味の範囲内に、用語「ポリペプチド」および「ペプチド」(時々、本明細書で交換可能に用いられうる)を含むように理解される。さらに、複数のポリペプチドサブユニット(例えば、DNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼII)または他の成分(例えば、テロメラーゼに存在するようなRNA分子)を含むタンパク質もまた、本明細書に用いられる場合、「タンパク質」の意味の範囲内に含まれるように理解されるものと思われる。同様に、タンパク質およびポリペプチドの断片もまた、本発明の範囲内であり、「タンパク質」と本明細書で呼ばれうる。
【0045】
「立体構造」または「立体構造制約」は、特定のタンパク質立体構造の存在、例えば、α-ヘリックス、平行および逆平行βストランド、ロイシンジッパー、ジンク・フィンガーなど、を指す。さらに、立体構造制約は、追加の構造的情報なしのアミノ酸配列情報を含みうる。例として、「--C--X--X--C--」は、2個のシステイン残基が2個の他のアミノ酸残基により分離されていなければならないことを示す立体構造制約であり、それらのそれぞれの同定は、この特定の制約に関連しては、無関係である。「立体構造変化」は、一つの立体構造からもう一つの立体構造への変化である。
【0046】
タンパク質の配列が正しい折り畳みをコードする正確な機構は知られていない。折り畳みによりコードされる天然状態に達するために、タンパク質分子は、多くの選択肢から選択された固有の立体構造へ変換しなければならない。機能性タンパク質は、典型的には、可溶性であり、コイルおよび規則正しい要素を含む様々な構造をとりうる。規則正しい要素は、ミオグロビンおよびヘモグロビンのようなタンパク質に優勢であるα-ヘリックスを含む。ヒトの老化過程中、いくつかのタンパク質において、可溶性構造(例えば、α-ヘリックス領域)が、機能の喪失と関連した凝集を起こすβ-シート構造へ立体構造的に変化する。
【0047】
立体構造的に変化した状態をとる場合にヒト疾患に関連している、少なくとも20個のタンパク質があり、これらの一部は、前に記載されている。図1は、TSE配座異性体のα-ヘリックス単量体10型およびβ-シート二量体12型の両方を示している。プリオンタンパク質の正常な野生型(wt)(PrPC)は、単量体状態を好み、一方、異常な疾患原因型(PrPSc)はより容易に多量体状態を呈する。
【0048】
タンパク質構造は、様々な実験的または計算論的方法により決定されうり、いくつかは下に記載されている。タンパク質構造は、少なくとも低分解能構造を作成することができる任意の方法により実験的に評価されうる。そのような方法は、現在、X線結晶構造解析および核磁気共鳴(NMR)分光法を含む。X線結晶構造解析は、タンパク質構造評価のための一つの方法であり、結晶における原子核を囲む電子雲による特性波長のX線放射の回折に基づいている。X線結晶構造解析は、特定の生体分子を作り上げている原子の本物に近い原子分解を決定するために精製された生体分子(しかし、これらは、しばしば、溶媒成分、補助因子、基質、または他のリガンドを含む)の結晶を用いる。結晶成長のための技術は、当技術分野において公知であり、典型的には、生体分子によって異なる。自動化結晶成長技術もまた公知である。
【0049】
核磁気共鳴(NMR)は、現在、生体分子の溶液立体構造(結晶構造よりむしろ)の決定を可能にする。典型的には、低分子、例えば、約100〜150個未満のアミノ酸のタンパク質、のみがこれらの技術を受け入れられる。しかしながら、最近の進歩は、同位体標識のような技術を用いて、より大きなタンパク質の溶液構造の実験的解明へと導いた。X線結晶構造解析を凌ぐNMR分光法の利点は、格子隣接相互作用がタンパク質構造を変化させうる場合には、構造が、結晶格子においてよりむしろ溶液において決定されることである。NMR分光法の欠点は、NMR構造が、結晶構造ほど詳細または正確ではないことである。一般的に、NMR分光法により決定された生体分子構造は、結晶構造解析により決定されたものに対して比較された中位の分解能である。
【0050】
生体分子構造を研究するにおいて有用な他の技術は、円偏光二色性(CD)、蛍光、および紫外線可視吸収分光法を含む。これらの技術の説明について、例えば、Physical Biochemistry: Applications to Biochemistry and Molecular Biology, 2.sup.nd ed., W.H. Freeman & Co., New York, N.Y., 1982を参照されたい。
【0051】
「等価の」とは、分析されるべきタンパク質のアミノ酸配列に配列において類似しているが、少なくとも1つであるが、5つより少ない(例えば、3つ以下)違い、置換、付加または欠失を有するアミノ酸配列を指す。従って、本文中での使用の範囲内におけるそのアミノ酸の基本的な機能を実質的に変化させない、与えられた配列における1個以上のアミノ酸の置換は、本発明を記載する目的のために、等価である。
【0052】
「相同性」、「の相同体」、「相同の」、または「同一性」もしくは「類似性」は、2つのポリペプチド間の配列類似性を指し、同一性は、よりきびしい比較である。相同性および同一性は、それぞれ、比較の目的のために整列されうる各配列における位置を比較することにより決定されうる。比較される配列における位置が、同じアミノ酸により占有されている場合には、分子はその位置において同一である。アミノ酸配列の同一性の程度は、アミノ酸配列により共有される位置における同一のアミノ酸の数の関数である。アミノ酸配列の相同性または類似性の程度は、アミノ酸配列により共有される位置におけるアミノ酸、すなわち構造的に関連したアミノ酸の数の関数である。「関連のない」、または「非相同の」配列は、本発明に用いられる配列の1つと、40%未満の同一性、もっとも、好ましくは25%未満の同一性ではあるが、を共有する。関連した配列は、40%より多い同一性、好ましくは少なくとも約50%同一性、より好ましくは少なくとも約70%同一性、よりいっそう好ましくは少なくとも約90%同一性、より好ましくは少なくとも約99%同一性を共有する。
【0053】
用語「パーセント同一の」とは、2つのアミノ酸配列間の配列同一性を指す。同一性は、それぞれ、比較の目的のために整列されうる各配列における位置を比較することにより決定されうる。比較される配列における等価の位置が同じアミノ酸により占有されている場合には、分子はその位置において同一である;等価の部位が、同じまたは類似したアミノ酸残基(例えば、立体的および/または電気的性質において類似した)により占有されている場合には、分子はその位置において相同的(または類似的)と呼ばれうる。相同性、類似性、または同一性のパーセンテージとしての表示は、比較される配列により共有される位置における同一または類似したアミノ酸の数の関数を指す。様々なアラインメントアルゴリズムおよび/またはプログラムが用いられうり、FASTA、BLASTまたはENTREZを含む。FASTAおよびBLASTは、GCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一部として利用可能であり、例えば、デフォルト設定で用いられうる。ENTREZは、National Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine, National Institutes of Health, Bethesda, Mdを通して利用可能である。一つの態様において、2つの配列のパーセント同一性は、1のギャップ重み、例えば、各アミノ酸ギャップが、あたかもそれが2つの配列間でただ1つのアミノ酸不一致であったかのように重み付けされる、でのGCGプログラムにより、決定されうる。配列同一性を決定するための他の技術は、周知であり、当技術分野において記載されている。
【0054】
本明細書に用いられる場合の用語「相互作用する」とは、天然における、タンパク質-タンパク質、タンパク質-核酸、核酸-核酸、およびタンパク質-低分子、または核酸-低分子の間の相互作用のような、分子間の検出可能な相互作用(例えば、生化学的相互作用)を含むことを意図される。
【0055】
用語「不溶性タンパク質の相同体」は、不溶性タンパク質遺伝子の相同体によりコードされるすべてのアミノ酸配列、およびそのような配列に等価または相同であるすべてのアミノ酸配列を含む。それゆえに、「不溶性タンパク質の相同体」は、Pfamファミリーにおいてヒットとして得点化されるタンパク質を含む。タンパク質配列において「不溶性タンパク質」ドメインの存在を同定する、および対象となるポリペプチドまたはタンパク質が特定のプロファイルを有すると決定するために、タンパク質のアミノ酸配列は、様々なデフォルトパラメーターを用いていくつかのデータベース(例えば、SwissProt, PIR)の1つに対して検索されうる(http://www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/HMM_search)。例えば、hmmsfプログラムは、検索プログラムのHM_MERパッケージの一部として利用できるのだが、MILPAT0063についてのファミリー特異的デフォルトプログラムであり、15のスコアがヒットを決定するためのデフォルト閾値スコアである。または、ヒットを決定するための閾値スコアは低下させられうる(例えば、8ビットまで)。Pfamデータベースの説明は、Sonham_mer et al. (1997) Proteins 28(3):405-420に見出されうり、HMMの詳細な説明は、例えば、Gribskov et al. (1990) Meth. Enzymol. 183:146-159; Gribskov et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:4355-4358; Krogh et al. (1994) J. Mol. Biol. 235:1501-1531; およびStultz et al. (1993) Protein Sci. 2:305-314に見出されうるが、それらの内容は、参照により本明細書に組み入れられている。
【0056】
「検体」は、検査されるべき材料の試料である。試料は、ガラスホモジナイザーにおけるホモジナイゼーションにより組織(例えば、挽肉の一部、生検手順により得られた組織の量)から調製されうる。材料の量は、約1 mgと1 gmの間、好ましくは10 mgと250 mgの間、理想的には20 mgと100 mgの間であるべきである。試料採取されうる材料は、適した溶媒、好ましくは、7.0と7.8の間のpHにおけるリン酸緩衝食塩水、に懸濁されうる。溶媒は、トリトンX-100、SDS、またはサルコシルのような界面活性剤を含みうる。ホモジナイゼーションは、ホモジナイザーのいくつかのエクスカーション、好ましくは10ストロークと25ストロークの間;理想的には15ストロークと20ストロークの間、について行われる。懸濁された試料は、好ましくは、100 gと1,000 gの間で5〜10分間、遠心分離され、上清材料は分析のために試料採取される。いくつかの試料において、Safar et al., Nature Medicine 4, pp.1157-1165 (1998)により記載された手順に従って、およびWadsworth et al. The Lancet, 358, pp.171-180 (2001)により改変されているように、上清材料をリンタングステン酸のような追加の試薬で処理することが好ましい場合がある。
【0057】
検査されるべき試料の量は、Bradford (1976)により記載された手順により測定されるような上清溶液のタンパク質含有量の測定に基づいている。好ましくは、これは、タンパク質の0.5 mgと2 mgの間に相当する。
【0058】
組織材料について上記の手順に加えて、検査試料は、血清、動物起源の産物を含みうる薬学的製剤、髄液、唾液、尿または他の体液から得られうる。液体試料は、直接的に検査されうる、または上記のようなリンタングステン酸のような薬剤での処理にかけられうる。
【0059】
「立体構造的プローブ」は、好ましくは、標的タンパク質におけるペプチドの一部と、類似している、およびより好ましくは同一である、アミノ酸配列を有する、かつまた、標的タンパク質(不溶性タンパク質)と複合体化された場合、立体構造変化を起こして、ββ-シート形成を生じる可能性をもつ、ペプチドである。そのような変化は、典型的には、プローブにより通常では証明されないβシート構造へと導く。理想的には、プローブは、標的タンパク質由来の2つのアミノ酸配列を有するパリンドロームの構造をもつ。本発明に有用である好ましいα-ヘリックスまたはランダムコイル立体構造的プローブ(すなわち、溶液中でα-ヘリックスまたはランダムコイル立体構造を示すプローブ)は、以下を含む:
【0060】
PrPScタンパク質(SEQ ID NO:13および14)(Swiss-Prot PO4156(Pfam ID Prion Pf00377 & 03991)のアミノ酸122位〜104位および109位〜122位と同一であるアミノ酸配列を含むパリンドロームの33-mer
【0061】
PrPScタンパク質(SEQ ID NO:13および14)(Swiss-Prot PO4156(Pfam ID Prion Pf00377 & 03991)のアミノ酸122位〜104位および109位〜122位と等価であるアミノ酸配列を含むパリンドロームの33-mer
【0062】
PrPScタンパク質(SEQ ID NO:13および14)(Swiss-Prot PO4156(Pfam ID Prion Pf00377 & 03991)のアミノ酸122位〜104位および109位〜122位と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含むパリンドロームの33-mer
【0063】
Aβペプチド(Nref 00111747(ヒト))のアミノ酸1位〜40位と同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0064】
Aβペプチド(Nref 00111747(ヒト))のアミノ酸1位〜40位と等価であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0065】
Aβペプチド(Nref 00111747(ヒト))のアミノ酸1位〜40位と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0066】
Aβペプチド(Nref 00111747(ヒト))のアミノ酸11位〜34位と同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0067】
Aβペプチド(Nref 00111747(ヒト))のアミノ酸11位〜34位と同一であるが、金属イオン相互作用を低下させ、かつペプチドの溶解度を増加させるためにRで置換された残基H13を含む、アミノ酸配列を含むプローブ
【0068】
Aβペプチド(Nref 00111747(ヒト))のアミノ酸25位〜35位と同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0069】
ポリリジンに見出されるヘリックス-ループ-ヘリックス立体構造、および、長さが少なくとも10個のアミノ酸残基であり、かつSEQ ID NO:8と等価または相同であるアミノ酸配列を有するプローブ
【0070】
ポリグルタミンに見出される立体構造、およびSEQ ID NO:9と等価または相同であるアミノ酸配列を有するプローブ
【0071】
野生型(wt)TSE(Human NREF 00130350)のアミノ酸104位〜122位と相同であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0072】
野生型(wt)TSE(Human NREF 00130350)のアミノ酸104位〜122位と等価であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0073】
野生型(wt)TSE(Human NREF 00130350)のアミノ酸配列104位〜122位と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0074】
(a)選択的に突然変異したTSE配列である;(b)不安定にされ、かつ非感染性である;および(c)野生型(wt)TSE(Human NREF 00130350)のアミノ酸配列104位〜122位と相同であるアミノ酸配列を有する、アミノ酸配列を含むプローブ
【0075】
(a)選択的に突然変異したTSE配列である;(b)不安定にされ、かつ非感染性である;および(c)野生型(wt)TSE(Human NREF 00130350)のアミノ酸配列104位〜122位と等価であるアミノ酸配列を有する、アミノ酸配列を含むプローブ
【0076】
(a)選択的に突然変異したTSE配列である;(b)不安定にされ、かつ非感染性である;および(c)野生型(wt)TSE(Human NREF 00130350)のアミノ酸配列104位〜122位と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を有する、アミノ酸配列を含むプローブ
【0077】
ヒト糖尿病に結びつけられるヒト島アミロイドポリペプチド前駆体(アミリン)タンパク質(アクセッション番号NP_000406(ヒト))のアミノ酸1位〜38位と同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0078】
ヒト糖尿病に結びつけられるヒト島アミロイドポリペプチド前駆体(アミリン)タンパク質(アクセッション番号NP_000406(ヒト))のアミノ酸1位〜38位に対応する配列内の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基と同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0079】
ヒト乳児SIDSに結びつけられるヒト肺表面活性剤タンパク質(NCBIアクセッション番号AAH32785(ヒト))のアミノ酸1位〜25位と同一であるアミノ酸配列を含むプローブ
【0080】
PrPScタンパク質(SEQ ID NO:13および14)(Swiss-Prot PO4156(Pfam ID Prion Pf00377 & 03991)のヒトのアミノ酸104位〜122位またはマウスのアミノ酸103位〜121位の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ
【0081】
ヒト血漿ゲルゾリン(SEQ ID NO:15)(P06396), Maury, et al. FEBS Lett., 260(1), pp. 85-87 (1990)のアミノ酸235位〜269位(下で強調されている)の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ;
YERLKATQVSKGIRDNERSGRARVHVSEEGTEPEAM (SEQ ID NO:16);
【0082】
下に描かれたシスタチンCタンパク質配列(SEQ ID NO:17)(P01034), Levy, et al. J. Exp. Med., 169(5), pp. 1771-8 (1989)のアミノ酸27位〜146位(下で強調されている)の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ。ペプチドのアミロイド形成型は、下のアミノ酸残基27位〜146位に対応する120個のアミノ酸である。適切なプローブは、少なくとも10個のアミノ酸のその任意の部分であり、多数のプローブがそれに応じて仮定されうる;
【0083】
シスタチンCタンパク質のパリンドロームのプローブ(4単位プロリンリンカーを含む上記配列のアミノ酸39位〜47位)
【0084】
下に描かれたハンチンチン(ハンチントン病タンパク質)タンパク質配列(SEQ ID NO:19)(P42858)[gi:1170192]の少なくとも10個でかつ23個までの連続したグルタミンアミノ酸残基オリゴまたはポリグルタミン(残基18位〜40位):
【0085】
例示的なプローブ:
【0086】
原繊維形成に結びつけられるヒト島アミロイドポリペプチド、下に描かれた配列(SEQ ID NO:21)NP_000406 [gi:4557655] Scrocchi, et al., J. Struct. Biol., 141(3), pp. 218-27 (2003)、の(8位〜20位)ドメインのアミノ酸残基12位〜17位および15位〜20位(下で強調されている)の少なくとも6個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ。
【0087】
例示的なプローブは、上記ペプチド配列の配列8位〜20位内の最小配列である以下の配列を含み、改変なしに用いられうる、または本発明のパリンドロームのプローブを形成するために用いられうる:
【0088】
トランスチレチンのペプチド断片、下に描かれた配列(SEQ ID NO:26) AAH20791 [gi:18089145] MacPhee and Dobson, J. Mol. Biol., 297(5), pp. 1203-15 (2000)、のアミノ酸残基10位〜19位(下で強調されている)の少なくとも5個の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むプローブ
【0089】
上で参照された配列(アミノ酸残基10位〜19位)に基づいたパリンドロームのプローブ:
【0090】
多数の他のプローブは、標準的実験室技術およびペプチドおよび関連した化学合成を用いて過度の実験なしに容易に作製されうる。
【0091】
プローブの天然の立体構造は、特に、円偏光二色性、フーリエ変換赤外、紫外線、核磁気共鳴、または蛍光のような1つまたは複数の分光学的方法により決定される。下記のような溶媒中のこの立体構造は、α-ヘリックスまたはランダムコイルのそれに対応するべきである(例えば、円偏光二色性において、スペクトルの性質は、立体構造を示す)。
【0092】
プローブは、光学的手段により検出できる置換基を含むように修飾される。そのような置換基は、トリプトファン(アミノ酸)、ピレンまたは類似したフルオロファオを含みうり、すべては、ペプチドプローブの末端位置において、またはの近くに、付着している。そのようなフルオロファオの付着は、当技術分野において周知である通常の化学的方法に従って行われるが、必ずしも、フルオロファオのプローブへの共有結合性付着によるとは限らない。理想的には、置換基は、エキシマーとして知られている種を生成するような様式で相互作用する能力をもつ。エキシマーは、特定の波長の光での励起により、単独で作用するいずれかのフルオロファオにより放射されるものとも大きさが異なる、異なる波長の光を放射する2つのフルオロファオの相互作用を示す。従って、そのようなエキシマーの形成を可能にする立体構造的プローブの構造変化は、光学的性質における変化により検出されうる。そのような変化は、プローブに付着したフルオロファオに依存して、多数ある中でも、UV、IR、CD、NMRまたは蛍光を含む公知の蛍光定量的技術により測定されうる。これらの変化の大きさは、プローブが立体構造変化を起こした程度に関連している。
【0093】
もう一つの態様において、プローブは、放射性物質で置換されうる。理想的には、これは、この目的のために現在、用いられている機械により検出されうる十分なエネルギーの陽電子放射であるべきである。そのような実体は、好ましくは、酸素-15(陽電子放射により崩壊する酸素の同位元素)または他の放射性核種を含む。この態様において、放射性標識プローブは、患者へ注入されうり、プローブのタンパク質標的への結合が外部からモニターされうる。
【0094】
プローブは、溶液中でランダムコイルまたはα-ヘリックス立体構造を示す少なくとも5個、好ましくは約10個以上のアミノ酸残基のペプチドまたはペプチド模倣体を含みうる。ペプチドまたはペプチド模倣体プローブ溶媒は、水性で、約4と約10の間、好ましくは約5と約8の間のpHをもちうり、約0.05と約0.5の間のイオン強度をもちうる(典型的には、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムのような塩化物塩で調製される場合)。溶媒はまた、容量で約30%〜約70%、好ましくは約45%〜約60%、の量のトリフルオロエタノールのような水混和性有機物質のパーセンテージを含みうる。溶媒は、酢酸塩/酢酸、トリス、またはリン酸塩のような適した緩衝系で調製されうる。
【0095】
プローブアミノ酸の配列は、分析されるべき標的タンパク質の性質から決定され、通常、α-ヘリックスまたはコイルのいずれかからβ-シートへの構造転移を起こすことが知られている標的の領域を含む。立体構造的プローブ配列は、理想的には、好ましくは長さが約10個と25個の間のアミノ酸;より好ましくは、長さが約14個と20個の間のアミノ酸の、対象となる標的配列の2つの繰り返しを含む。これらは、好ましくは、図10に示されているようなパリンドロームを形成するようにプローブにおいて配置される。
【0096】
本発明の方法およびキットに用いられる好ましいプローブは、分析されるべきタンパク質のβ-シート領域に対応するアミノ酸配列を有する。これらのプローブは、好ましくは、長さが少なくとも5個のアミノ酸単位であり、長さが約300〜400個のアミノ酸単位(-mer)またはそれ以上でありうるが、好ましくは、これらは、約10アミノ酸〜約50アミノ酸長である。本発明の特定の局面において、β-シート領域に対応する好ましいプローブは、約15-mer〜約100-merであり、他において、好ましいプローブは、約20-merから約50-merまでの範囲でありうる。与えられたプローブの好ましい長さは、標的タンパク質と複合体化し、ββ-シート形成を生じるプローブ能力の機能である。
【0097】
本発明で用いるプローブは、すでに存在している配列データベースにおける既存の情報から容易に決定される、または代わりとして、経験的に容易に決定されうる。従って、プローブは、一般的に、最小数のアミノ酸、好ましくは少なくとも10個、およびより好ましくは約10〜25個のアミノ酸に対応し、不溶性タンパク質においてα-ヘリックスまたはランダムコイルからββ-シートへの立体構造転移を起こす標的タンパク質のペプチド配列の少なくとも一部に対応する。
【0098】
適切なプローブの提示および合成を導く経験的情報内には、実行者を、本発明を使用するように導きうるいくつかの制約があることに留意されたい。なぜなら、最初の立体構造状態における集団と、変換された立体構造状態(複合体における)において主である集団を区別するほんの数kcalの差があるだけだからである。この変換は、ββ-シート複合体を形成しうるプローブ分子とそれの本来の会合要素の間の会合のKdによるか、または分子間の静電気的相互作用における変化による(例えば、溶液のイオン強度を低下させることによる)かのいずれかによる駆動力により与えられる。Alのような金属イオンが含まれる場合、すなわちもう一つのリガンドの結合の場合には、他の静電気的または立体効果が寄与しうる。プローブペプチドのサイズは、変わりうるが、検出条件下で「合理的に」明確な二次構造をもつために、および選択されたプリオンに対して十分な認識的特異性をもつために、十分な長さであるべきである。プローブペプチドはまた、突然変異した系統に一般的に適用できるために、単一部位突然変異に対応するべきであり、これらの変化および異種性は、分子の熱力学的安定性に影響を及ぼすと認識している。さらに、プローブは、患者集団に対して、その集団がヒト患者集団であろうと、家畜集団であろうと、または他の哺乳動物集団であろうと、非感染性でなければならない。
【0099】
いったん、ペプチド配列がプローブ(上記のようなβ-シート形成の原因である標的タンパク質の少なくとも一部に対応する)として確立されたならば、ペプチド配列は、ペプチドプローブの分析を容易にすることができる部分または化学的実体で末端キャッピング(endcap)されうる(ペプチドの一方であるが、好ましくは両方の末端に)。好ましくは、この部分は、ピレンのようなフルオロファオであるが、分析のために用いられる分析技術に依存して、広く変わりうる。部分または化学的実体は、ペプチドのアミノもしくはカルボキシ末端において、または、の近くで、複合体化されうる、または共有結合性に結合されうるが、好ましくは、短い疎水性ペプチド配列で末端キャッピングされている。本発明の好ましい局面において、プローブペプチドのアミノおよびカルボキシ末端の両方は、サイズが約1アミノ酸から約5アミノ酸までの範囲である小さな疎水性ペプチドで末端キャッピングされている。これらは、天然または合成でありうるが、好ましくは天然である(すなわち、標的タンパク質のβ-シート形成領域由来である)。フルオロファオは、好ましくは、プローブのアミノおよび/もしくはカルボキシ末端(好ましくは両方)において、または、の近くに、付着しており、例えば、多数ある中でも、ピレン、トリプトファン、フルオレセイン、ローダミンでありうり、好ましくは、ピレンである。フルオロファオは、正しい幾何学的配向にある場合、エキシマーを形成することが好ましい。
【0100】
本発明による立体構造的プローブは、好ましくは、天然でパリンドロームである。これは、β-シート形成の原因である標的タンパク質の一部に対応する第一および第二ペプチド配列を含むように与えられた立体構造的プローブ配列の組織化を指すが、ペプチド配列は、パリンドロームの様式で、すなわち、第一ペプチド配列におけるカルボキシ末端からアミノ末端まで(またはアミノ末端からカルボキシ末端へ)、および第二ペプチド配列におけるアミノ末端からカルボキシ末端まで(またはカルボキシ末端からアミノ末端へ)、提示されている。パリンドロームの立体構造的プローブにおける第一および第二ペプチド配列は、長さが同一である必要はないが、これは、特定の態様において好ましくありうるが、少なくともおおよそで等価であるべきである(2つのペプチド配列{プローブの「アーム」}は、長さが多くて15個、好ましくは多くて10個、およびよりいっそう好ましくは多くて5個のアミノ酸の差であるべきである)。好ましくは、パリンドロームのプローブ配列内の第一および第二ペプチド配列は、1個と5個の間のアミノ酸、好ましくは1個と3個の間のアミノ酸、を含み、好ましくは、少なくとも1個のプロリンアミノ酸を含み、およびより好ましくは、主としてプロリンアミノ酸を含む、リンカーにより分離されている。図10は、本発明に有用である、例示的なパリンドロームの33-mer立体構造的プローブを示している。
【0101】
好ましくは、本発明による立体構造的プローブは、好ましくは、標的タンパク質の関連したペプチド配列由来であり、かつ長さが、1個のアミノ酸から20個以上のアミノ酸まで、好ましくは長さが約2〜10個のアミノ酸と、変わりうり、立体構造的プローブの2つの末端の1つにおいて、またはの近くに、現れる、疎水性アミノ酸配列を含む。パリンドロームの立体構造プローブの場合、これらの疎水性アミノ酸配列は、プローブの2つのペプチドアームの末端に現れる。任意で、プローブはまた、プローブの少なくとも1つの末端に、およびパリンドロームのプローブの場合、プローブの各末端においてまたはの近くに、合成疎水性アミノ酸配列(すなわち、β-シート形成の原因である標的タンパク質のペプチド配列に対して天然ではない)を含みうるが、長さがわずか1個のアミノ酸から20個以上のアミノ酸まで、好ましくは長さが約3〜10個のアミノ酸と変わりうる。
【0102】
例として、かつ非限定的に、標的タンパク質における所望のペプチド配列が、アミノ末端からカルボキシ末端へ読む、配列
(AAAVは、疎水性アミノ酸配列である)を含む場合には、パリンドロームは、
である第一ペプチド配列、および
(またはその配列に近い変異)である第二ペプチド配列を含み、2つの配列が1個から5個までのアミノ酸を含むリンカーにより分離されており、それらのアミノ酸の少なくとも1個、および好ましくは、それらのアミノ酸の、全部ではないが、大部分が、プロリンアミノ酸である。プローブは、それゆえに、以下である:
(仮定的パリンドロームのプローブ)
【0103】
好ましくは、パリンドロームのプローブは、標的タンパク質の関連した配列から得られる疎水性アミノ酸配列を含む。本発明による立体構造的プローブは、容易に得られうる。
【0104】
以下のルールは、本発明による適切な好ましい立体構造的プローブの形成を導くために用いられうる。これらのルールは、一般的に、非限定的に、本発明による立体構造的プローブに適用するが、より具体的には、本発明による好ましいパリンドロームの立体構造的プローブを作製する状況において用いられる。
【0105】
以下のルールは、好ましい立体構造的ペプチドプローブを作製するために本発明に適用されうる:
1. ペプチドパリンドロームの各「アーム」は、最小限5個、および好ましくは、少なくとも10〜12個のアミノ酸、および理想的には、約25個以下のアミノ酸、を有するべきである。
2. アミノ酸配列は、α-ヘリックスまたはランダムコイルからβ-シートへの立体構造転移を起こすことが知られているより大きいタンパク質の領域から選択される。
3. 以下の追加の基準の1つまたは複数:
a)疎水性アミノ酸の高い割合 − 一般的に約75%以上(アミノ酸の数に基づいて)、理想的には80%以上
b)少なくとも20個および好ましくは25個のアミノ酸繰り返し(ハンチンチンに存在しいてるような)
c)異符号の群がった荷電(Zhang, S., Altman, M. and Rich, A. Conformational Disease, A Compendium, Solomon, Taraboulos and Katchalski-Katzir, eds. The Center for the Study of Emerging Diseases, 2001に記載されているような)
d)1個以上、好ましくは5個未満、のアミノ酸を有する、かつ1個以上のプロリン残基を含む、各ペプチドアーム間のリンカー配列
【0106】
ペプチドプローブについての試験基準:
1. パリンドロームのペプチドプローブの立体構造は、β-シートではなくて、α-ヘリックスまたはランダムコイルのそれであるべきである。
2. ペプチドの立体構造の決定は、理想的には、溶液立体構造を同定できる円偏光二色性測定により達成される。これらは、水性緩衝液および/またはトリフルオロエタノールのような有機剤を含みうる1つまたは複数の溶媒においてCD分光計を用いて行われる − 図11参照。
【0107】
上記で得られた一般的ルールを適用し、かつ当技術分野において容易に利用できる方法を用いて、当業者は、本発明において有用でありうる好ましい特性をもつ多数の立体構造的ペプチドプローブを作製することができる。
【0108】
「円偏光二色性」(「CD」)は、光学活性物質が、CD分光偏光計により測定される場合、わずかに異なって、LおよびR側の円偏光を吸収する時、観察される。差は、非常に小さく、楕円率における度の分率を表す。図11は、タンパク質およびペプチドがとることができる3つの異なる一般的な立体構造型を代表する連合のCD曲線を描く。ペプチドおよびタンパク質に存在する二次構造の別個の型についてのCDスペクトルは異なる。
【0109】
複合体化対非複合体化タンパク質のCD曲線を測定および比較することは、本発明を実施する正確な測定手段を代表する。
【0110】
意外にも、本発明者らは、ほぼ生理的条件下で、2つのペプチド-14-mer(SEQ ID NO:3)および19-mer(SEQ ID NO:2)を共有結合性に連結するパリンドローム、33-mer(SEQ ID NO:1または29)、は図12に示されているように、14-mer構造に似ている、2つの疎水性鎖の近接にもかかわらず、大部分はコイル立体構造を示すことを測定した。パリンドロームの33-merのペプチドの各末端におけるピレンの付加は、図13に示されているように、立体構造変化のスペクトル観察を可能にする。単量体(開鎖)立体構造における33-merの末端に付着したピレンについてのスペクトルスキャンは、370 nmと385 nmの間に最大発光をもつ、著しく異なる蛍光スペクトルを与えるが、ピレン標識ペプチドの励起二量体またはエキシマー状態は、475 nmと510 nmの間に発光最大をもつ。
【0111】
上記のいくつかの光学的方法のいずれかにより立体構造変化を追跡することは可能であるが、本発明の好ましい態様は、蛍光分光法を利用し、なぜなら、その技術が感度、迅速性および操作の簡単さを提供するからである。プローブは、特定の光学的性質をもつフルオロファオの両方の末端における付着により修飾される。これらは、特定の波長の光(発色団自身の吸収および発光スペクトルにより規定される)での照射により蛍光を発する能力を含むことが好ましい。従って、吸収最大の波長の近くの波長の光での照射、および励起波長から区別されるために十分により高い波長における光の放射 − この測定は、当業者に周知である。そのようなフルオロファオの例は、限定されるわけではないが、ピレン、トリプトファン、フルオレセイン、ローダミンを含む。付着したフルオロファオが、正しい幾何学的配向にある場合、エキシマーを形成する能力をもつこともまた、好ましい。
【0112】
「エキシマー」とは、必ずしも共有結合性とは限らず、かつ光子により励起されている分子実体と同一の非励起分子実体の間に形成される、付加生成物である。付加生成物は、天然では一過性であり、それが光子の放射により蛍光を発するまで存在する。通常の発光スペクトルの波長より長い波長における新しい蛍光バンドの発生によりエキシマー(またはエキシマーの形成)を認識することが可能である。エキシマーは、励起スペクトルが単量体のそれと同一であるため、蛍光共鳴エネルギー移転から識別されうる。
【0113】
エキシマーの形成は、フルオロファオの幾何学的アラインメントに依存しており、それらの間の距離により激しく影響を及ぼされる。好ましい態様において、フルオロファオは、各プローブ末端に存在し、フルオロファオ間のエキシマー形成は、全体的なプローブ立体構造がα-ヘリックスまたはランダムコイルである限り、無視できる。これは、測定されるべき標的タンパク質の非存在下における分析に用いられうる溶媒中のプローブの蛍光性挙動の測定により容易に測定される。
【0114】
分析物標的との相互作用後の好ましい立体構造転移は、エキシマー形成が分析されうる条件下で蛍光スペクトルを測定することにより達成される。典型的には、例示的なフルオロファオとしてピレンを用いて、励起波長は約350 nmであり、観察波長は、365〜600 nmである。励起後の単量体ピレンの通常の発光(単純蛍光)は、約370〜385 nmの間に最大波長として記録される。代表的データは図14に示されている。
【0115】
図14に示されているように、エキシマーまたは励起二量体状態は、475〜510 nmの間の最大で記録される。励起二量体状態の形成はまた、高塩の添加を通して、およびペプチドのpIにほぼ等しいpH(例えば、図示されている場合、約10のpH)で測定を行うことにより、促進されうる。
【0116】
それゆえに、本発明の好ましい方法において、分析されるべき特定のタンパク質とプローブの相互作用は、エキシマー形成が生じるようにプローブにおいて立体構造変化を引き起こす。これは、本明細書に記載された手順により容易に測定される。分析物の非存在下において示されるもの(α-ヘリックスまたはランダムコイル)からβ-シート構造へのプローブ構造の変換は、プローブに付着したフルオロファオが、容易に同定されうるエキシマーを形成するのを可能にする。さらに、エキシマー形成の大きさは、存在するタンパク質分析物の量に直接関係している。
【0117】
タンパク質またはプリオンは、凝集型において、または脂質、他のタンパク質または糖のような他の細胞成分の存在下において、検出されうる。分析のための試料調製は、好ましくは、ホモジナイズされる、または組織もしくは凝集体構造の類似した破壊にかけられ、細胞片は、好ましくは、遠心分離により除去される。この過程は、理想的には、緩衝塩溶液の存在下において行われ、SDS、トリトンX-100またはサルコシルのようないくつかの界面活性剤の1つを利用しうる。さらに、試料の濃度は、いくつかの薬剤のいずれかでの処理により達成されうる;一つの好ましい薬剤は、リンタングステン酸塩であり、それは、Safar et al. Nature Medicine 4:1157-1165 (1998)の方法に従って用いられる。
【0118】
本発明の好ましい態様において、ペプチドプローブは、未知のまたは検査試料への添加のために選択される。ペプチドプローブは、好ましくは、主にα-ヘリックスもしくはランダムコイルの二次構造をもつが、好ましくは、必ずしもではないが、β-シート形成の原因である標的タンパク質の部分由来である、タンパク質またはペプチド配列である。特に好ましい態様において、ペプチドプローブは、ポリリジンに見出されるヘリックス-ループ-ヘリックス構造からなるペプチド断片である。もう一つの特に好ましい態様において、ペプチドプローブは、野生型(wt)TSEから、所望の種特異的TSEペプチド配列から、または、不安定かつ非感染性にするような様式で突然変異されている選択的突然変異型TSE配列からまでも、選択されたペプチド配列で作製されうる。さらに、ピレンのような外因性蛍光体が、一般の蛍光検出技術を用いて、予想される立体構造変化の検出を可能にするようにペプチドプローブへ付加または設計されうる。
【0119】
いったん、ペプチドプローブが選択されたならば、それは検査試料へ添加される。しかしながら、ペプチドプローブの添加の前に、超音波処理のような当技術分野において一般的に知られた脱凝集技術に試料をかけることが好ましい。脱凝集段階は、これらの脱凝集された試料物質が新しく導入されるペプチドプローブと自由に結合できて、それにより予想される触媒的伝播を促進するように、任意の可能性のある凝集した試料物質をバラバラになるのを可能にする。
【0120】
検査試料または脱凝集された検査試料をペプチドプローブと相互作用するようにさせておいた後に、その結果生じた混合物は、その後、凝集体の検出のための当技術分野において一般的に知られた分析方法に、および蛍光ペプチドプローブが用いられている場合において蛍光測定に、かけられる。異常に折り畳まれたまたは疾患原因性タンパク質の特徴であるいくらか優占したβ-シート形成を含む未知の、または検査試料は、結果として、β-シートにおける増加、および従って、検査試料およびペプチドプローブの両方を含む最終混合物において凝集体形成を生じる。逆に、大部分のβ-シート二次構造を欠く未知のまたは検査試料は、β-シート構造への転移を触媒することも、凝集体の形成を伝播することもない。
【0121】
最初の立体構造変化は、いくつかの方法において、検査試料で引き起こされる。いずれの理論にも縛られることを意図しないが、金属リガンドの結合は、タンパク質立体構造における変化を方向づけ、凝集に有利でありうる。異なるペプチド配列の発現または切断は、原繊維およびプラーク形成へ導く進行型凝集を促進することができる。遺伝的点突然変異もまた、2つの別個の立体構造の必要とされる相対的エネルギーレベルを変化させることができ、結果として、構造転移における中間点シフトを生じる。さらになお、濃度レベルにおける増加は、立体構造転移に有利であるのに十分でありうる。しかしながら、最初のトリガー機構を問わず、プリオン関連疾患においてのような多数の異常なタンパク質立体構造における疾患過程は、異常な立体構造の触媒的伝播を含み、結果として、以前に正常なタンパク質の構造変換を生じる。
【0122】
本発明に有用な光学的検出技術は、限定されるわけではないが、1-アニリノ-8-ナフタレンスルホナート(ANS)もしくはコンゴレッド染料のような外因性蛍光体を用いる光散乱または疎水性検出、単量体の立体構造変化かまたはα-βヘテロ二量体における界面における結合のいずれかを通しての蛍光共鳴エネルギー移転(FRET)および内因性トリプトファン蛍光の消光を含む。
【0123】
他の構造技術は、平衡超遠心分離またはサイズ排除クロマトグラフィーを含む。
【0124】
本発明は、異常タンパク質またはプリオンのレベルを感染性のレベルと直接的に相関させるために伝播された立体構造変化を用いる。このため、伝播の結果としての感染性生成物における増加がないような様式で本発明の方法を利用することが好ましい。これは、異常型の感染、伝染および伝播の鎖の間の連結に「裂け目」を置くことにより達成されうる。そのような「裂け目」は、凝集体の二量体型と多量体型の間の過渡期に生じなければならない。多量体型の物理的形成は、それの形成へ導く段階を単純に妨げることによりブロックされうる。これは、リンカーまたは「つなぎ鎖」におけるプローブは、お互いに遭遇する可能性がより高く、従って、結果としてシグナルを増幅することを生じるという理解の下で、対象となる配列が、非関連性ペプチドへ、または天然の「ブロッカー」セグメントにより付着している、プローブを用いることにより達成されうる。
【0125】
本発明は、以下の実施例においてさらに記載されているが、それは例証となるものであって、決して限定するものではない。
【0126】
実施例1
材料および方法
試料は、以下のように、本発明の使用による検査および診断のために得られうる。試料は、ガラスホモジナイザーにおけるホモジナイゼーションにより、または液体窒素の存在下におけるすり鉢とすりこぎにより、組織(例えば、挽肉の一部、または生検手順により得られた組織の量)から調製されうる。材料の量は、約1 mgと1 gmの間、好ましくは10 mgと250 mgの間、理想的には20 mgと100 mgの間であるべきである。試料採取されうる材料は、適した溶媒、好ましくは、7.0と7.8の間のpHにおけるリン酸緩衝食塩水、に懸濁されうる。リボヌクレアーゼ阻害剤の添加が好ましい。溶媒は、界面活性剤(例えば、トリトンX-100、SDS、またはサルコシル)を含みうる。ホモジナイゼーションは、ホモジナイザーのいくつかのエクスカーション、好ましくは10ストロークと25ストロークの間;理想的には15ストロークと20ストロークの間、について行われる。懸濁された試料は、好ましくは、100 gと1,000 gの間で5〜10分間、遠心分離され、上清材料は分析のために試料採取される。いくつかの試料において、Safar et al., Nature Medicine 4, 1157-1165 (1998)により記載された手順に従って、およびWadsworth, The Lancet, 358, 171-180 (2001)により改変されているように、上清材料をリンタングステン酸のような追加の試薬で処理することが好ましい場合がある。8個のプリオン系統は、異なる立体構造をもつPrPSc分子を有する。Safar, et al.およびWadsworth、前記を参照。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病におけるプロテアーゼ抵抗性プリオンタンパク質の組織分布は、Wadsworth, et al. 前記に記載されているように、感度が高い免疫ブロッティングアッセイを用いて報告されている。
【0127】
検査されるべき試料の量は、Bradford, Anal. Biochem. 72:248-254 (1976)により記載された手順により測定されるような上清溶液のタンパク質含有量の測定に基づいている。タンパク質のマイクログラム量を測定するための迅速かつ感度の高い方法は、タンパク質-色素結合の原理を利用する。好ましくは、これは、タンパク質の約0.5 mgと2 mgの間に相当する。
【0128】
組織材料について上記の手順に加えて、検査試料は、血清、動物起源の産物を含みうる薬学的製剤、髄液、唾液、尿または他の体液から得られうる。液体試料は、直接的に検査されうる、または上記のようなリンタングステン酸のような薬剤での処理にかけられうる。
【0129】
例証的分析
TSEを含む試料は、以下のように本発明に従って分析されうる。図2を参照して、概略図の上端行は、β-シートを含むと表明されているTSEタンパク質の未知試料12を示す。β-シートは、超音波処理により脱凝集される。標識ペプチドプローブ14を添加し、試料12に結合するようにさせておく。試料12におけるβ-シート立体構造は、ペプチドプローブをβ-シート立体構造16に従わせるように誘導する。ペプチドプローブ14の間でのβ-シート伝播は、凝集体18を形成する。結果生じた、大部分のβ-シート型への転移および増幅された凝集体形成は、光散乱および円偏光二色性(CD)のような技術により検出される。特に好ましい態様において、ペプチドプローブは、蛍光標識され、蛍光検出が用いられる。
【0130】
図2の下端行は、TSEタンパク質の未知試料がそれの正常なα-ヘリックス型10であると表明されている代わりの例を示す。一貫性のために、試料は、上記の同じ脱凝集過程にかけられる。標識ペプチドプローブ14の追加において、β-シート型への転移も未知試料への結合も生じない。結果として、標識ペプチドプローブの場合、集まった蛍光シグナルはなく、他の分析ツールによる凝集体形成の検出はない。この概略図に基づいて、未知試料は、そのような異常タンパク質立体構造または配列の存在または非存在について検査されうる。
【0131】
実施例2
ポリリジンがモデルペプチドとして用いられた。実験は、大部分α-ヘリックス型からβ-リッチ型への転移に関与している立体構造変化を例証するためにモデル系を用いて行われた。選択されたモデル系は、非神経毒性ポリアミノ酸ポリリジンを用いた。ポリアミノ酸は、入手可能性および安全性のために選択された;かつ、正常には、5と9の間のpH値においてランダムコイル立体構造を証明する。
【0132】
図3は、ポリ-L-リジン 20マイクロモル(μM)52,000分子量(MW)がペプチドモデルとして用いられた実験のCDグラフを描く。
【0133】
図3にも示されているように:
【0134】
試料24は、pH 7、25℃に維持されたが、約205ナノメートル(nm)での最小を示し、ランダムコイル構造を示唆した;pH 11(等電点近く)、50℃で維持された試料26は、結果として、β-シート構造(タンパク質立体構造の例示的なCDスペクトルについて図11参照)を示唆する約216ナノメートル(nm)での最小を生じた;試料28は、pH 7、25℃でおよびpH 11、50℃で維持された試料の1:1組み合わせであったが、結果として、β-シート構造を示唆する約216ナノメートル(nm)での最小を生じた;
【0135】
試料30は、pH 7、50℃でおよびpH 11、50℃で維持された試料の1:1組み合わせであったが、結果として、β-シート構造を示唆する約216ナノメートル(nm)での最小を生じた。
【0136】
実施例3
図4は、以下で行われた実験の一般的なCD結果を示す:
(1)ポリ-L-リジンを用いて;および
(2)様々な環境条件下においてランダムコイルからβ-シートへの立体構造変化の効果を観察するために、様々な温度およびpHにおいて。結果は、温度およびpHの両方は、転移において重要な役割を果たしていることを示している。結果はまた、β-シートペプチドの相対的少量のランダムコイル試料への添加が、結果として、β-リッチ立体構造へのシフトを生じうること、ならびにそのような変化が、試料の温度およびpH環境に依存して促進されうることを示している。
【0137】
より具体的には、図4は、実施例1〜3に記載された実験技術に従ってペプチドプローブとして70マイクロモル(μM)で52,000分子量(MW)のポリ-L-リジンを用いて作成された吸光度グラフを示す。図4は以下のことを示している:
【0138】
試料32(pH 11、25℃)は、大部分α-ヘリックス構造を示す、約0.12でプラトーを証明した;
【0139】
試料34(pH 7、50℃で維持された)は、大部分ランダムコイル構造を示す、約0.22でプラトーを証明した;
【0140】
試料36(pH 7、50℃でおよびpH 11、50℃で維持された試料の10:1組み合わせ)は、結果として、ランダムコイルからβ-シート構造への促進された転移を示す、約0.22から0.33への急勾配を生じた;
【0141】
試料38(pH 7、25℃でおよびpH 11、50℃で維持された試料の10:1組み合わせ)は、結果として、ランダムコイルからβ-シート構造への転移を示す、約0.22から0.26への緩やかな勾配を生じた。
【0142】
上記のすべての実験に基づいた観察は、相対的少量のβ-シートペプチドのランダムコイル試料への添加が、結果として、β-リッチ立体構造へのシフトを生じうること、ならびにそのような変化が、試料の温度およびpH環境に依存して促進されうることを示している。
【0143】
実施例4
図15に示された結果へと導いた実験は、33-merの標的ペプチド(SEQ ID NO:1および29):
のみの使用、およびエキシマー形成の観察を通してペプチド会合を探索することを含んだ。用いられた33-merの標的ペプチド(SEQ ID NO:1または29)は、図10Bに示されているように、位置_M11V_、M14L_、_M20L_、およびM23V_におけるバリンおよびロイシンの代わりのメチオニンの置換の点で対応するヒト配列とは異なるマウスアミノ酸配列であった。CD(ペプチドは標識されていない)および分光蛍光分析研究(ピレン標識ペプチドを用いる)を用いて観察した結果を比較した。ホモジネートは用いられなかった。図15に示された結果へと導く実験は、何が、33-merの標的ペプチド(SEQ ID NO:1または29)を大部分単量体から二量体(エキシマー)への立体構造的に変化して、凝集するように誘発するのかを理解するために企てられた詳細な研究であった。μM範囲での33-merの標識ペプチド会合を促進する条件が、見出された。
【0144】
33-merの標的ペプチドの静電気的相互作用をスクリーニングし、それにより、それの溶解度を最小限にした条件(pI=10)が、極めて低い濃度(10μM)下でペプチドの自己会合を引き起こした。この自己会合は、二量体またはエキシマーの形成、およびペプチドの末端上のピレンフルオロファオによる同時に生じる蛍光の近赤外シフトにおいて明らかである。例として、図15の曲線1は、優勢なペプチド配座異性体が単量体であるpH 6〜8、KCl(100〜500μM)の条件を代表する;一方、図15の曲線2は、ペプチドの非常に低い濃度においてのpH 10〜11、KCl(100〜500μM)の条件を代表し、強いエキシマー形成(単量体の凝集)を観察した。
【0145】
実施例5
図16に示された結果へと導いた実験は、様々な個々のペプチド、および33-merのプローブ(19-merおよび14-merを含む)標的ペプチド(SEQ ID NO:1、29、2または3):
の使用を含んだ。アッセイ条件は、CDによりモニターされる立体構造への効果を観察するために変化させられた。目標は、何の熱力学的条件が、単量体ランダムコイルから凝集されたβ-シートへの1段階転移を生じるのかを決定し、かつおそらくペプチドのミセル形成である会合性「X」状態を避けることであった。
【0146】
図16に示された結果へと導いた実験において、溶媒条件の範囲に渡って、およびペプチド濃度(ペプチド濃度は、対数目盛で提示され、CDについての標準的図 − 図11も参照する)の範囲に渡って、詳細な立体構造情報を得るように、CDによりペプチド会合をモニターするために、特定のλ(205 nm)波長が用いられた。
【0147】
標的ペプチドについて回収された会合曲線(θ205)は、50μMおよび3 mM範囲において、それぞれ、2つの立体構造転移を示し、コイルから「X」状態へと経て、そしてβ-シートへ動いた。
【0148】
図16を参照して、50%より上の溶媒条件について(左端の点線)、33-merの標的ペプチド(SEQ ID NO:1および29)
は3μMにおいてコイル状態からβ-シート状態へ転移したが、一方、構成要素19-merまたは14-merは、転移することはできたが、ほとんど10倍高いペプチド濃度においてであった(中心線)。水性条件下で(太い線)、ペプチドのいずれも、β-シート構造へ自己会合することができなかった。
【0149】
33-merのパリンドロームペプチドの標的ペプチド(SEQ ID NO:1および29)は、それが「行き止まり」会合状態(水性条件下でプラトーに達する効果により示されるような)を避ける点において、50%溶媒(アセトニトリルまたはトリフルオロエタノール)条件下で、非常に低い濃度(すなわち、1μM)において固有の性質を示した。
【0150】
図16は、溶媒および温度における変動が、標的ペプチドの会合性挙動に有意には影響を及ぼさないこと、ならびにすべてのペプチドが同じ曲線をたどり、配列特異性がこの種の分子集合において重要な特徴ではないことを示唆していることを示す。
【0151】
実施例6
図17に示された結果へ導いた実験は、以下のように行われた。
【0152】
スクレーピー感染(293系統)ハムスター脳材料の1グラムが、滅菌リン酸緩衝食塩水において液体窒素中でホモジナイズされた。10倍段階希釈が滅菌PBSへ作製された。脳ホモジネートにおけるプロテアーゼ抵抗性プリオンタンパク質(PrPSc)の濃度は、キャピラリー電気泳動抗体-捕獲により測定された。プロテアーゼ抵抗性プリオンタンパク質(PrPSc)の10 ngと等価である脳ホモジネートは、50%TFE(トリフルオロエタノール)において33-merの標的ペプチドの1.5μMと混合され、二重クロノメーター分光蛍光計における350 nmでの励起の前に室温で1時間、インキュベートされ、350 nmから600 nmまでの発光が記録され、励起および発光スキャンが5時間目および24時間目において繰り返された。33-merのペプチド単独が対照として用いられた。
【0153】
感染性プリオンタンパク質の添加が、33-merの標的ペプチドの蛍光における有意な増加へと導き、50%トリス:50%TFEの条件下でのCDデータによりほぼβ-シート立体構造であることが見出された。この蛍光の増加は、33-mer凝集体の形成を示した。33-mer凝集体は、時間と共に、不可逆性に、不安定になって、解離することが見出された。
【0154】
時間と共に複合体対ペプチドについての蛍光の放射を追跡することにより、2つの異なる波長、377 nm(三角)および475 nm(四角)、においてモニターする場合、複合体が時間と共に解離したが、一方、ペプチド蛍光は安定したままであることが示された。
【0155】
実施例7
図18に示された結果へ導いた実験は、以下のように行われた。
【0156】
スクレーピー感染したおよび健康な、ハムスター脳、ヒツジ脳ならびにエルク脳の1グラムが、滅菌リン酸緩衝食塩水において液体窒素中でホモジナイズされた。10倍段階希釈が滅菌PBSへ作製された。脳ホモジネートにおけるプロテアーゼ抵抗性プリオンタンパク質(PrPSc)の濃度は、キャピラリー電気泳動抗体-捕獲により測定された。脳ホモジネート、感染および健康、は50%TFE(トリフルオロエタノール):50%トリスにおいて33-merの標的ペプチドの0.52μMと混合され、二重クロノメーター分光蛍光計における350 nmでの励起の前に室温で1時間、インキュベートされ、350〜600 nmでの発光が記録された。50%TFE:50%トリスにおける33-merのペプチド単独が追加の対照として用いられた。
【0157】
トリス:TFE(1:1)溶媒中の、感染した脳ホモジネート(グラフ線1-)、健康な脳ホモジネート(グラフ線2-)、およびペプチド単独(グラフ線3-)の存在下における標的ペプチド(520 nM)の蛍光スペクトルは、図18に示されている。データは、ハムスター(パネルA)、ヒツジ(パネルB)、およびエルク(パネルC)由来の0.01%脳ホモジネートについてである。ハムスター(270 pg/ml)、ヒツジ(60 pg/ml)、およびエルク(6 pg/ml)。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】TSE配座異性体のα-ヘリックス単量体10およびβ-シート二量体12を示す。プリオンタンパク質(PrPC)の正常な野生型(wt)は、単量体状態を好み、一方、異常な、疾患原因型(PrPSc)は多量体状態を好む。
【図2】β-シートで構成されるTSEタンパク質を含む試料12の診断分析を示す。
【図3】本発明に従って行われた、およびペプチドモデルとしてポリ-L-リジン20マイクロモル(μM)52,000分子量(MW)を用いた、診断分析の円偏光二色性グラフを示す。
【図4】ペプチドモデルとしてポリ-L-リジン、70マイクロモル(μM)52,000分子量(MW)を用いて行われた診断分析の吸光度グラフを示す。
【図5】ペプチドモデルとしてポリ-L-リジン、70マイクロモル(μM)52,000分子量(MW)を用いた図3からの結果、およびpHおよび温度の立体構造変化への効果を示す。
【図6】立体構造変化を起こしたα-ヘリックス束構造の近位および遠位における蛍光プローブとしてピレンを用いた分光分析を示す。
【図7】タンパク性物質またはプリオンにおける立体構造変化に関連したエネルギー変化を示す。
【図8】PrPのα-ヘリックスおよびループ構造を示す。
【図9】PrPScの大部分のβ-シート二次構造を示す。
【図10】本発明の方法に用いられるパリンドロームの33-merのプローブを示す。
【図11】タンパク質およびペプチドがとりうる3つの別個の一般的な立体構造型の円偏光二色性グラフを示す(供給源:Woody RW (1996) Circular Dichroism and the Conformational Analysis of Biomolecules (Fasman, GD ed.) pp. 25-69, Plenum press NY)。
【図12】本発明に従って水性条件で行われた、ならびにパリンドロームの33-merのプローブ、およびそれを構成する14-merアミノ酸配列および19-merアミノ酸配列(これらの3つの配列は図10に示されている)を用いた、診断分析の円偏光二色性グラフを示す。
【図13】診断分析の分光蛍光分析データが両末端に付着したピレンを有するパリンドロームの33-merのプローブ(SEQ ID NO:1、図10参照)を用いて行われた、図6の分光分析のバリエーションを示す。単量体(開鎖)立体構造におけるスペクトルスキャンは、370 nmと385 nmの間に最大発光をもつ、際立った蛍光スペクトルを生じるが、ピレン標識ペプチドの励起二量体またはエキシマー状態は、475 nmと510 nmの間に発光最大をもつ。
【図14】ピレンがフルオロファオとして用いられた分光分析を示し、励起波長は、約350 nmであり、観察波長は約365〜600 nmである。励起後の単量体ピレンの正常な発光(単純蛍光)は、約370〜385 nmの間で最大波長として記録された。
【図15】様々な条件下において図10に示された配列のパリンドロームの33-merのプローブを用いた診断分析における単量体形成(IM)に対するエキシマー形成(ID)の比率を示す。本発明者らは、タンパク質の最小溶解度を、条件がそれの等電点近くである時に見ることを予想し、それが、条件(2)が33-merのペプチドの等電点にほぼ等しい場合に本発明者らが観察したことである−それは、(1)と比較してこれらの条件下で劇的に低下した溶解度をもつため、それ自身と凝集する。この例において、静電気的相互作用(pI=10)は、ペプチドの等電点で極めて低い濃度(10μM)下で自己会合を引き起こす。以下の凡例は図15に適用する。−1. pH 6〜8、KCl(100〜500 mM)−2. pH 10〜11、KCl(100〜500 mM)
【図16】コイルドからβ-シートへの変換に関連した最適なパラメーターを決定するために様々な条件下における、パリンドロームの33-merのプローブ(SEQ ID NO:1)、19-mer(SEQ ID NO:2)および14-mer(SEQ ID NO:3)(図10参照)を用いた診断分析における立体構造変化についての会合曲線を示す。
【図17】プリオンタンパク質および33-merのプローブの複合体の蛍光が時間の関数として測定された実施例6に記載された実験からの結果を示す。複合体は、時間と共に(1時間〜24時間)、実質的に解離した。
【図18】図18(a)〜(c)は、トリス:TFE(1:1)溶媒中の、感染した脳ホモジネート(1)、健康な脳ホモジネート(2)、およびペプチド単独(3)の存在下における標的ペプチド[520 nM]の蛍光スペクトルを示す。データは、ハムスター(A)、ヒツジ(B)、およびエルク(C)由来の0.01%脳ホモジネート(ハムスター[270 pg/ml]、ヒツジ[60 pg/ml]、およびエルク[6 pg/ml])について得られた。
【図19】本発明に従って行われた蛍光診断分析の予備的検量線を示す。この図に示されたデータは、本発明が、何の最適化もせずに、今日ヨーロッパで使用されている有効な検査より2桁より大きい感度であることを証明する。プリオン感染性:1 IU=3 fM=200,000 PrP プリオンタンパク質濃度は、Schmerr博士のキャピラリー免疫電気泳動法を用いて測定された。Schmerr, et al., J. Chromatogr. A., 853(1-2), 207-214 (August 20, 1999)を参照。本発明での診断法の感度は、緑色バーの左側に現れるが、より通常の診断法の感度は、緑色バーの右側に現れる。データは図18から取られている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、試料において不溶性タンパク質またはプリオンのββ-シート立体構造を検出するための方法:
(a)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それにより(i)大部分がββ-シート立体構造への立体構造変換を起こす、および(ii)試料におけるβ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つもしくは複数のα-ヘリックスまたはランダムコイル立体構造的プローブと試料を反応させる段階;ならびに
(b)検出可能な凝集体のレベルを検出する段階であって、検出可能な凝集体のレベルが、試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンのレベルと相関している、段階。
【請求項2】
プローブ末端が、プローブが試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する時に光学的に検出できる部分と結合している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
部分がフルオロファオである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
プローブ末端が、プローブが試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する時、検出可能な放射性ヌクレオチド部分に結合している、請求項1記載の方法。
【請求項5】
プローブが、ββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンのアミノ酸配列と相補的である少なくとも2つのアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
プローブの1つまたは複数が、ββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンのアミノ酸配列と相同である少なくとも2つのアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
プローブの1つまたは複数がパリンドロームのプローブである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンが、低密度リポタンパク質受容体、嚢胞性線維症膜制御因子、ハンチンチン、Aβペプチド、プリオン、インスリン関連アミロイド、ヘモグロビン、αシヌクレイン、ロドプシン、クリスタリン、およびp53からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
1つまたは複数のプローブが、PrPScタンパク質のアミノ酸122位〜104位および109位〜122位(SEQ ID NO:1または29)と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含むパリンドロームの33-merである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
1つまたは複数のプローブが、SEQ ID NO:4のAβペプチドのアミノ酸1位〜40位と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
1つまたは複数のプローブが、ポリリジンに見出されるヘリックス-ループ-ヘリックス立体構造を有するアミノ酸配列であって、かつSEQ ID NO:8と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
1つまたは複数のプローブが、野生型(wt)TSEのアミノ酸104位〜122位(SEQ ID NO:10)と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
1つまたは複数のプローブが、以下であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法:(a)選択的に突然変異したTSE配列である;(b)不安定にされ、かつ非感染性である;および(c)SEQ ID NO:10と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を有する。
【請求項14】
試料が、組織試料である、または髄液、唾液、尿もしくは他の体液から得られる液体生体材料である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
試料におけるβ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それにより(a)大部分がββ-シート立体構造への立体構造変換を起こす、および(b)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つもしくは複数のα-ヘリックスまたはランダムコイル立体構造的プローブを含むキットであって、検出可能な凝集体のレベルが、試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンのレベルと相関している、キット。
【請求項16】
プローブ末端が、プローブが試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する時に光学的に検出できる部分と結合している、請求項15記載のキット。
【請求項17】
プローブの1つまたは複数が、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、20、22、23、24、25または27のアミノ酸配列を含む、請求項16記載のキット。
【請求項18】
ββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンが、低密度リポタンパク質受容体、嚢胞性線維症膜制御因子、ハンチンチン、Aβペプチド、プリオン、インスリン関連アミロイド、ヘモグロビン、αシヌクレイン、ロドプシン、クリスタリン、およびp53からなる群より選択される、請求項15記載のキット。
【請求項19】
1つまたは複数のプローブが、PrPScタンパク質のアミノ酸122位〜104位および109位〜122位(SEQ ID NO:1または29)と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含むパリンドロームの33-merである、請求項15記載のキット。
【請求項20】
1つまたは複数のプローブが、Aβペプチドのアミノ酸1位〜40位(SEQ ID NO:4)と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項15記載のキット。
【請求項21】
1つまたは複数のプローブが、ポリリジンに見出されるヘリックス-ループ-ヘリックス立体構造を有するアミノ酸配列であって、かつSEQ ID NO:9と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項15記載のキット。
【請求項22】
1つまたは複数のプローブが、野生型(wt)TSEのアミノ酸104位〜122位(SEQ ID NO:10)と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項15記載のキット。
【請求項23】
1つまたは複数のプローブが、以下であるアミノ酸配列を含む、請求項15記載のキット:(a)選択的に突然変異したTSE配列である;(b)不安定にされ、かつ非感染性である;および(c)SEQ ID NO:10と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を有する。
【請求項24】
以下の段階を含む、被検体が立体構造的に変化したタンパク質またはプリオンに関連した疾患に罹っているかどうか、または罹りやすいかどうかを診断する方法:
(a)被検体から試料を得る段階;
(b)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それにより(i)大部分がββ-シート立体構造への立体構造変換を起こす、および(ii)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つまたは複数のα-ヘリックスまたはランダムコイルの立体構造的プローブと試料を反応させる段階;ならびに
(c)検出可能な凝集体のレベルを検出する段階であって、検出可能な凝集体のレベルが、試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンの量、および試料の感染性のレベルと相関しており、被検体がββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンに関連した疾患に罹っているかどうか、または罹りやすいかどうかを示す、段階。
【請求項25】
プローブ末端が、プローブが試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する時に光学的に検出できる部分と結合している、請求項24記載の方法。
【請求項26】
プローブが、ββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンのアミノ酸配列と相補的である少なくとも2つのアミノ酸配列を含む、請求項24記載の方法。
【請求項27】
プローブの1つまたは複数が、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、20、22、23、24、25または27のアミノ酸配列を含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
ββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンが、低密度リポタンパク質受容体、嚢胞性線維症膜制御因子、ハンチンチン、Aβペプチド、プリオン、インスリン関連アミロイド、ヘモグロビン、αシヌクレイン、ロドプシン、クリスタリン、トランスチレチン、ゲルゾリン、シスタチンおよびp53からなる群より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項29】
1つまたは複数のプローブが、PrPScタンパク質のアミノ酸122位〜104位および109位〜122位(SEQ ID NO:1または29)と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含むパリンドロームの33-merである、請求項24記載の方法。
【請求項30】
1つまたは複数のプローブが、Aβペプチドのアミノ酸1位〜40位(SEQ ID NO:4)と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項24記載の方法。
【請求項31】
1つまたは複数のプローブが、リジンに見出されるヘリックス-ループ-ヘリックス立体構造を有するアミノ酸配列であって、かつオリゴリジンまたはポリリジンと約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項24記載の方法。
【請求項32】
1つまたは複数のプローブが、以下であるアミノ酸配列を含む、請求項24記載の方法:(a)選択的に突然変異したTSE配列である;(b)不安定にされ、かつ非感染性である;および(c)SEQ ID NO:10と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を有する。
【請求項33】
試料が、組織試料である、または髄液、唾液、尿もしくは他の体液から得られる液体生体材料である、請求項24記載の方法。
【請求項34】
疾患が、アルツハイマー病、プリオン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、スクレーピーおよび牛海綿状脳症(PrPSc);ALS(SODおよび神経フィラメント);ピック病;パーキンソン病、前頭側頭認知症;糖尿病II型(アミリン);多発性骨髄腫-プラズマ細胞疾患;家族性アミロイドポリニューロパシー;甲状腺髄様癌;慢性腎不全、鬱血性心不全、老人性心臓全身性アミロイドーシス(トランスチレチン)、慢性炎症、アテローム性動脈硬化症、家族性アミロイドーシス、またはハンチントン病である、請求項24記載の方法。
【請求項35】
3つのペプチド区画、第一ペプチド区画、第二ペプチド区画、および第三ペプチド区画を含むパリンドロームのペプチドプローブであって、該第一および該第三区画が、それぞれが標的不溶性タンパク質におけるββ-シート形成の原因である標的不溶性タンパク質由来のペプチド断片と同一の少なくとも5アミノ酸を含む複数のペプチド配列を含み、かつ該第一ペプチド区間の少なくとも一部が該第三ペプチド区画の少なくとも一部のパリンドロームであり、該第一ペプチド区画または該第三ペプチド区画が、該標的不溶性タンパク質由来の該ペプチド断片における少なくとも5アミノ酸のペプチド配列と同一であり、該第二ペプチド配列が、1個がプロリン残基である1〜10個のアミノ酸単位を含む、パリンドロームのペプチドプローブ。
【請求項36】
第一および第三区画が、測定されることが可能である化学的部分を収容できるように化学修飾または複合体化されうる疎水性アミノ酸で末端キャッピングされる、請求項35記載のプローブ。
【請求項37】
化学的部分が発色団であり、プローブの第一および第三の両方のペプチド区画が該発色団を含む、請求項36記載のプローブ。
【請求項38】
発色団が、ピレン、トリプトファン、フルオレセイン、またはローダミンである、請求項37記載のプローブ。
【請求項39】
SEQ ID NO:1、18、23、25、27、または29の配列を含む、請求項35記載のプローブ。
【請求項1】
以下の段階を含む、試料において不溶性タンパク質またはプリオンのββ-シート立体構造を検出するための方法:
(a)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それにより(i)大部分がββ-シート立体構造への立体構造変換を起こす、および(ii)試料におけるβ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つもしくは複数のα-ヘリックスまたはランダムコイル立体構造的プローブと試料を反応させる段階;ならびに
(b)検出可能な凝集体のレベルを検出する段階であって、検出可能な凝集体のレベルが、試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンのレベルと相関している、段階。
【請求項2】
プローブ末端が、プローブが試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する時に光学的に検出できる部分と結合している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
部分がフルオロファオである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
プローブ末端が、プローブが試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する時、検出可能な放射性ヌクレオチド部分に結合している、請求項1記載の方法。
【請求項5】
プローブが、ββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンのアミノ酸配列と相補的である少なくとも2つのアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
プローブの1つまたは複数が、ββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンのアミノ酸配列と相同である少なくとも2つのアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
プローブの1つまたは複数がパリンドロームのプローブである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンが、低密度リポタンパク質受容体、嚢胞性線維症膜制御因子、ハンチンチン、Aβペプチド、プリオン、インスリン関連アミロイド、ヘモグロビン、αシヌクレイン、ロドプシン、クリスタリン、およびp53からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
1つまたは複数のプローブが、PrPScタンパク質のアミノ酸122位〜104位および109位〜122位(SEQ ID NO:1または29)と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含むパリンドロームの33-merである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
1つまたは複数のプローブが、SEQ ID NO:4のAβペプチドのアミノ酸1位〜40位と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
1つまたは複数のプローブが、ポリリジンに見出されるヘリックス-ループ-ヘリックス立体構造を有するアミノ酸配列であって、かつSEQ ID NO:8と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
1つまたは複数のプローブが、野生型(wt)TSEのアミノ酸104位〜122位(SEQ ID NO:10)と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
1つまたは複数のプローブが、以下であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法:(a)選択的に突然変異したTSE配列である;(b)不安定にされ、かつ非感染性である;および(c)SEQ ID NO:10と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を有する。
【請求項14】
試料が、組織試料である、または髄液、唾液、尿もしくは他の体液から得られる液体生体材料である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
試料におけるβ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それにより(a)大部分がββ-シート立体構造への立体構造変換を起こす、および(b)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つもしくは複数のα-ヘリックスまたはランダムコイル立体構造的プローブを含むキットであって、検出可能な凝集体のレベルが、試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンのレベルと相関している、キット。
【請求項16】
プローブ末端が、プローブが試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する時に光学的に検出できる部分と結合している、請求項15記載のキット。
【請求項17】
プローブの1つまたは複数が、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、20、22、23、24、25または27のアミノ酸配列を含む、請求項16記載のキット。
【請求項18】
ββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンが、低密度リポタンパク質受容体、嚢胞性線維症膜制御因子、ハンチンチン、Aβペプチド、プリオン、インスリン関連アミロイド、ヘモグロビン、αシヌクレイン、ロドプシン、クリスタリン、およびp53からなる群より選択される、請求項15記載のキット。
【請求項19】
1つまたは複数のプローブが、PrPScタンパク質のアミノ酸122位〜104位および109位〜122位(SEQ ID NO:1または29)と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含むパリンドロームの33-merである、請求項15記載のキット。
【請求項20】
1つまたは複数のプローブが、Aβペプチドのアミノ酸1位〜40位(SEQ ID NO:4)と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項15記載のキット。
【請求項21】
1つまたは複数のプローブが、ポリリジンに見出されるヘリックス-ループ-ヘリックス立体構造を有するアミノ酸配列であって、かつSEQ ID NO:9と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項15記載のキット。
【請求項22】
1つまたは複数のプローブが、野生型(wt)TSEのアミノ酸104位〜122位(SEQ ID NO:10)と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項15記載のキット。
【請求項23】
1つまたは複数のプローブが、以下であるアミノ酸配列を含む、請求項15記載のキット:(a)選択的に突然変異したTSE配列である;(b)不安定にされ、かつ非感染性である;および(c)SEQ ID NO:10と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を有する。
【請求項24】
以下の段階を含む、被検体が立体構造的に変化したタンパク質またはプリオンに関連した疾患に罹っているかどうか、または罹りやすいかどうかを診断する方法:
(a)被検体から試料を得る段階;
(b)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと相互作用し、それにより(i)大部分がββ-シート立体構造への立体構造変換を起こす、および(ii)試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する、1つまたは複数のα-ヘリックスまたはランダムコイルの立体構造的プローブと試料を反応させる段階;ならびに
(c)検出可能な凝集体のレベルを検出する段階であって、検出可能な凝集体のレベルが、試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンの量、および試料の感染性のレベルと相関しており、被検体がββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンに関連した疾患に罹っているかどうか、または罹りやすいかどうかを示す、段階。
【請求項25】
プローブ末端が、プローブが試料におけるββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンと検出可能な凝集体を形成する時に光学的に検出できる部分と結合している、請求項24記載の方法。
【請求項26】
プローブが、ββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンのアミノ酸配列と相補的である少なくとも2つのアミノ酸配列を含む、請求項24記載の方法。
【請求項27】
プローブの1つまたは複数が、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、20、22、23、24、25または27のアミノ酸配列を含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
ββ-シート立体構造不溶性タンパク質またはプリオンが、低密度リポタンパク質受容体、嚢胞性線維症膜制御因子、ハンチンチン、Aβペプチド、プリオン、インスリン関連アミロイド、ヘモグロビン、αシヌクレイン、ロドプシン、クリスタリン、トランスチレチン、ゲルゾリン、シスタチンおよびp53からなる群より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項29】
1つまたは複数のプローブが、PrPScタンパク質のアミノ酸122位〜104位および109位〜122位(SEQ ID NO:1または29)と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含むパリンドロームの33-merである、請求項24記載の方法。
【請求項30】
1つまたは複数のプローブが、Aβペプチドのアミノ酸1位〜40位(SEQ ID NO:4)と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項24記載の方法。
【請求項31】
1つまたは複数のプローブが、リジンに見出されるヘリックス-ループ-ヘリックス立体構造を有するアミノ酸配列であって、かつオリゴリジンまたはポリリジンと約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項24記載の方法。
【請求項32】
1つまたは複数のプローブが、以下であるアミノ酸配列を含む、請求項24記載の方法:(a)選択的に突然変異したTSE配列である;(b)不安定にされ、かつ非感染性である;および(c)SEQ ID NO:10と約70%〜約90%同一であるアミノ酸配列を有する。
【請求項33】
試料が、組織試料である、または髄液、唾液、尿もしくは他の体液から得られる液体生体材料である、請求項24記載の方法。
【請求項34】
疾患が、アルツハイマー病、プリオン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、スクレーピーおよび牛海綿状脳症(PrPSc);ALS(SODおよび神経フィラメント);ピック病;パーキンソン病、前頭側頭認知症;糖尿病II型(アミリン);多発性骨髄腫-プラズマ細胞疾患;家族性アミロイドポリニューロパシー;甲状腺髄様癌;慢性腎不全、鬱血性心不全、老人性心臓全身性アミロイドーシス(トランスチレチン)、慢性炎症、アテローム性動脈硬化症、家族性アミロイドーシス、またはハンチントン病である、請求項24記載の方法。
【請求項35】
3つのペプチド区画、第一ペプチド区画、第二ペプチド区画、および第三ペプチド区画を含むパリンドロームのペプチドプローブであって、該第一および該第三区画が、それぞれが標的不溶性タンパク質におけるββ-シート形成の原因である標的不溶性タンパク質由来のペプチド断片と同一の少なくとも5アミノ酸を含む複数のペプチド配列を含み、かつ該第一ペプチド区間の少なくとも一部が該第三ペプチド区画の少なくとも一部のパリンドロームであり、該第一ペプチド区画または該第三ペプチド区画が、該標的不溶性タンパク質由来の該ペプチド断片における少なくとも5アミノ酸のペプチド配列と同一であり、該第二ペプチド配列が、1個がプロリン残基である1〜10個のアミノ酸単位を含む、パリンドロームのペプチドプローブ。
【請求項36】
第一および第三区画が、測定されることが可能である化学的部分を収容できるように化学修飾または複合体化されうる疎水性アミノ酸で末端キャッピングされる、請求項35記載のプローブ。
【請求項37】
化学的部分が発色団であり、プローブの第一および第三の両方のペプチド区画が該発色団を含む、請求項36記載のプローブ。
【請求項38】
発色団が、ピレン、トリプトファン、フルオレセイン、またはローダミンである、請求項37記載のプローブ。
【請求項39】
SEQ ID NO:1、18、23、25、27、または29の配列を含む、請求項35記載のプローブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2007−536502(P2007−536502A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542734(P2006−542734)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/040309
【国際公開番号】WO2005/057166
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(507133946)アドライフ インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/040309
【国際公開番号】WO2005/057166
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(507133946)アドライフ インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]